▼異文化理解と過去からの学び

本社に掲げられているオムロンの社憲

出張者や赴任者を含めた渡航者の安全管理に、同社は各国政府や危機管理アシスタンス会社、コンサルティング会社、報道機関など複数の情報収集ルートを確保している。

各国の政府が公表している海外安全に関する情報を比較分析すると、「国によって危険度の評価に違いがあり、警戒レベルが急速に高まりやすいなど、各国の特徴が分かった。この特徴を把握するかしないかで、情報の活用の仕方が変わります」と櫛田氏は話す。

オムロングループが活用する情報源の1つに、共同通信「海外リスク情報」がある。櫛田氏は「本当に役立っています。速報性と客観性を重視して採用しました」と話す。

素早い初動対応には、世界中のリスク情報をカバーする「速報メール」は不可欠。速報メールをきっかけに、契約している危機管理のアシスタンス会社やコンサルティング会社に情報収集を依頼することもあるという。

また「海外リスク情報のWebサイトの検索機能を活用し、過去からの状況推移を確認することも多い」と語る。配信メールや検索した情報をまとめ、発生した事態の分析や従業員への注意喚起、報告書作成など多くの場面で活用しているという。

グループ全従業員の安全対策強化をグローバルで進め、約10年が経過したオムロン。「相手の文化や歴史、習慣を尊重しながら進めるために、それらを学ぶことが非常に重要」と話す。加えて、これまで経験した事例や対策を整理し、そこで得た学びを伝えることで、後進も育ってきているという。だからこそ、櫛田氏はこう語る。

「これまで多くの企業の方が、法人という枠組みを越えて私たちに対策を教え、そして支えてくださった。本当にお世話になりました。私も少しずつですが、これまで得た学びや知見を還元していきたい」