フジテレビ(4kclips/Adobe Stock)

1月27日のフジテレビの記者会見は10時間超えとなり、うんざりしてしまった方が大半ではないでしょうか。批判の多かった報道陣は業界全体として教訓とすればいいのでそれはさておき、運営側の対応をどうみるのか。不祥事の記者会見でやるべきことは、信頼回復の第一歩と位置付けたダメージコントロールです。どこで何を失敗したか、どうすればよかったのか、時系列と会見の内容から教訓を整理します。

初動失敗の典型的パターン

記者会見の形式は、基本的に会見を主催する側が決められます。そして「危機管理広報(クライシスコミュニケーション)」の視点から、説明責任を果たしたうえで、可能なかぎり短縮するための準備をするのがセオリー。しかし、フジテレビには、それができていませんでした。

問題を振り返ります。昨年12月19日、週刊誌である女性セブンのスクープでタレントの中居正広氏が女性とのトラブルで9000万円の解決金を支払ったことが報じられました。その後、週刊文春の取材で被害女性が「加害者とフジテレビを許さない」(12月25日)とコメントしました。一方で、フジテレビは「当社の関与なし」とする見解文を会社HPで発表しました。

これは、お笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志氏の性加害を文春が報道をしたときの対応と同じです。吉本興業は調査もせず「事実無根」との見解書を、翌日にHPに出していました。初動ミスの再来です。問題発生時には「調査をします」とコメントするのが危機管理広報の鉄則ですが、それすらできていませんでした。

平時から危機管理の訓練をしていないことが明白です。これで報道が収束するはずがなく、むしろ火に油を注ぐことになるというリスク予測ができていません。

年明けにはトラブルを「幹部が握りつぶした」とする報道が、再度、文春から流れました。1月9日に中居正広氏は「トラブルは事実。示談金により今後の活動は可能」とコメント。この問題は世界でもニュースとして流れました。1月14日、フジ・メディア・ホールディングスの7%の株を保有する米ファンドのダルトン・インベストメンツはフジテレビに対し、企業統治の欠陥を指摘。

「この問題への対応が遅れたり、あいまいになった場合、視聴率の低下やスポンサー離れにつながり、株主価値がさらに損なわれる可能性がある」として、外部の専門家による第三者委員会を立ち上げ、事実関係の調査などを書簡で求めました。

なぜこの問題が世界で注目されるのか。それは取引先の人権リスクを特定して予防すべきとする「人権デューデリジェンス」の流れがあるからです。こうしたビジネスと人権の潮流を広報部やリスクマネジメントの部署、経営者は学んでいなかったのでしょうか。