2024/06/03
「共同通信 海外リスク情報」活用術
▼成功事例からの「学びのパッチワーク」
1933年に立石電機製作所として創業し、世界130カ国以上で事業を展開するオムロングループ。世界中で活動する全従業員の海外出張と赴任時の安全対策強化に取り組む。
グループ全社の海外安全対策を担当する、オムロン エキスパートリンクの第一エキスパート部リスクマネジメントグループでリスク・マネジメントアソシエイトを務める櫛田昌徳氏は、オムロングループの海外安全対策を「成功事例からの『学びのパッチワーク』」と評する。
オムロングループでは各企業の海外安全対策を参考にしてきた。櫛田氏がこれまで多くの企業を訪問して、成功事例を学び、手本となる対策を積極的に取り入れてきたのだ。オムロンの本社がある関西圏だけでなく、関東圏にもたびたび足を運び、訪問した企業は数十社以上。
各企業の海外安全対策担当者と地道なコミュニケーションを重ね、全国にネットワークを確立してきた。櫛田氏は「今でも学びをいただき、情報連携もしている。本当に感謝しきれない」と明かす。
オムロングループが海外安全対策の強化に着手したのは2014年。前年にはアメリカでボストンマラソンの爆弾テロ事件が発生し、アフリカでもアルジェリアで天然ガス施設が襲撃され、邦人が犠牲になっていた。
同社は2015年度のリスクマネジメント委員会で、グローバル全社員の海外出張と駐在時の安全対策強化を含む「全従業員の安全対策」を、重要リスクテーマとして位置づけた。「テロや誘拐、自然災害のようなリスクが世界各地で顕在化し、オムロングループ社員の海外出張の安全対策が急務でした」と櫛田氏は語る。
オムロンではグループのリスクマネジメントをまとめた「オムロン統合リスクマネジメントルール」をもとに、グローバルにおけるルールやポリシーを整備していった。
当時のオムロンでは、海外に出張する際は各ビジネスカンパニーがそれぞれの裁量で対応していたという。そのため、それぞれ独自の仕組みが存在。管理側が出張に関するデータを受け取っても出張先が企業名のみで、どの国に出張しているか不明なケースがあるなど、詳細把握に時間がかかっていた。
「そのころは海外でテロや災害が起きると出張者の安否確認に1日半はかかっていました」と櫛田氏は振り返る。
「共同通信 海外リスク情報」活用術の他の記事
- 先行企業の学びを受け継ぎ、進化するオムロンの海外危機管理
- 二度と悲劇を起こさない、矢崎総業の海外安全対策
- 激動の時代における住友商事の安全対策
- 豊田通商グループにおける海外駐在員と出張者の安全管理
- 三菱電機グループの海外安全・危機管理施策
おすすめ記事
-
能登の二重被災が語る日本の災害脆弱性
2024 年、能登半島は二つの大きな災害に見舞われました。この多重被災から見えてくる脆弱性は、国全体の問題が能登という地域で集約的に顕在化したもの。能登の姿は明日の日本の姿にほかなりません。近い将来必ず起きる大規模災害への教訓として、能登で何が起きたのかを、金沢大学准教授の青木賢人氏に聞きました。
2024/12/22
-
製品供給は継続もたった1つの部品が再開を左右危機に備えたリソースの見直し
2022年3月、素材メーカーのADEKAの福島・相馬工場が震度6強の福島県沖地震で製品の生産が停止した。2009年からBCMに取り組んできた同工場にとって、東日本大震災以来の被害。復旧までの期間を左右したのは、たった1つの部品だ。BCPによる備えで製品の供給は滞りなく続けられたが、新たな課題も明らかになった。
2024/12/20
-
企業には社会的不正を発生させる素地がある
2024年も残すところわずか10日。産業界に最大の衝撃を与えたのはトヨタの認証不正だろう。グループ会社のダイハツや日野自動車での不正発覚に続き、後を追うかたちとなった。明治大学商学部専任講師の會澤綾子氏によれば企業不正には3つの特徴があり、その一つである社会的不正が注目されているという。會澤氏に、なぜ企業不正は止まないのかを聞いた。
2024/12/20
-
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/12/17
-
-
-
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方