2025/03/03
GO株式会社

初開催でもエントリー多数
警察庁発表にもとづく2023年の交通事故死者数は、コロナ禍後の経済活動再開とともに8年ぶりに前年を上回り、翌2024年は企業にとって交通事故削減への取り組みの重要性が強く認識される一年となった。社用車が絡む交通事故の発生は、社会全体の安全性だけでなく、企業の経営リスク対応という点でも大きな課題となる。それをしっかりと認識し、新たなテクノロジーの活用や独自の工夫で取り組みを進化させて成果を上げる企業は増加しつつあるが、これまで各社の工夫が共有される機会は少なかった。 「Safety Driving Award 2024」は、社用車を保有する企業による交通事故削減に向けた優れた取り組みを共有する“学びの場”として、また他の企業・業界への波及も視野に、そうした取り組みに“光を当てる”ための表彰制度として『日経ビジネス』(株式会社日経BP)が創設。また、タクシーアプリ『GO』を展開するGO株式会社の次世代AIドラレコサービス『DRIVE CHART(ドライブチャート)」が運営協力として参画している。

同アワードの概要を簡単に説明すると、表彰対象は、社用車(営業車・トラック・バス・タクシー・送迎車など)を保有して交通安全に取り組む企業で、エントリーシート提出を経て「営業車部門」または「運送事業部門」のいずれかにエントリーする必要がある。エントリーした各社の取り組みは、学識者など外部専門家を含む合計6名の審査員によって「実効性」「再現性」「波及性」「先進性」の4つの視点から審査される。審査の結果、各部門3社、合計6社の受賞企業が選ばれ、授賞式イベントで紹介されるほか、同イベント内で受賞企業によるパネルディスカッション、参加企業と受賞企業による交流会も行われた。
主催者によると、今回のアワードでは初開催にもかかわらず数多くのエントリーが集まったという。AIを活用したモビリティ・通信分野の技術が日進月歩で変化するなか、企業による交通事故削減の新たな取り組みにも社会全体から注目が集まっていると言えるだろう。
共通項は「リスク運転」の撲滅
昨年11月開催の授賞式イベントでは、基調講演として警察庁の牧丈二氏、特別講演として元プロ野球選手の井口資仁氏が登壇。牧氏は、2023年の交通事故死者数が8年ぶりに前年を上回り、特にスマートフォン・携帯電話を使用した「ながら運転」による交通事故や、飲酒運転による死亡事故率の高さが目立ったことを指摘した。井口氏の特別講演では、現役引退後に千葉ロッテマリーンズ監督を務めた実体験に基づき、チームづくりでのデータ活用やビジョン浸透のためにコーチ・選手とのコミュニケーション量を重視したことなど、組織運営に活かせる学びが共有された。
続く授賞式では、営業車部門「ゴールド賞」のジョンソンコントロールズ株式会社、「シルバー賞」の株式会社ビーナス、「ブロンズ賞」のトヨタテクニカルディベロップメント株式会社、運送事業部門「ゴールド賞」のロジスティード株式会社、「シルバー賞」のディー・エイチ・エル・ジャパン株式会社、「ブロンズ賞」の京王自動車株式会社の各代表者が登壇し、自社の社用車安全管理の取り組みを発表した。
交通事故削減に向けて高い成果をあげる取り組みとして受賞各社が共通して言及したのは、「管理者やドライバーの安全意識を変える」ことであり、急減速や急ハンドルなどの「ヒヤリハット」、それ以前に発生する「脇見」「一時不停止」などの「リスク運転」の撲滅への注力だった。

■各社の発表要旨
<ジョンソンコントロールズ>
・ながら運転等を防止する社内規定を設け、AIドラレコを活用し円滑な動画確認と運転指導を実施。
・罰則規定の強化に加え、組織体制や会議体の見直しなど徹底した運用で、重大事故を0件にまで削減。
・全国産業安全衛生大会でAIドラレコ活用の活動報告を行うなど、自社の学びを精力的に発信。
<ビーナス>
・重大事故の未然防止を目的に、全車両へAIドラレコを導入。リスク運転の発生率を定量的なKPIとして設定。
・ドライバーに対する運転指導のルールを定めるとともに、新規入社者への教育や表彰制度へも活用。
・従業員からも事故削減へ向けたアイデアが出るなど意識の変化が表れ、リスク運転数も約9割の大幅削減。
<トヨタテクニカルディベロップメント>
・年2回約2か月間の安全運転啓蒙活動を実施。マンネリ化を防ぐため毎回テーマを変えている。
・昨年は運転診断アプリを利用。部対抗などゲーム感覚で楽しめる内容で従業員約1000人を巻き込んだ。
・参加者99%以上の運転見直しの機会となり、年間で加害事故0件を達成。
<ロジスティード>
・生体デバイスとAIドラレコを活用した事故リスクを予測する産官学連携での研究を推進。
・自社開発したDXソリューションにより事故の未然防止活動を強化し、98%のヒヤリハット減少と、75%の事故削減を実現。
・官公庁の実証実験への協力などを通じて、業界全体の健康起因事故削減へ貢献。
<ディー・エイチ・エル・ジャパン>
・デジタコのスコアリング機能を使った安全対策から、AIドラレコを活用した運転指導へ切り替え。
・リスク運転の検出傾向から事故を起こしやすい特性のドライバーを見極め、トレーニング内容に反映。
・運転指導の質と効率が向上し、有過失事故を毎年継続的に昨年対比2~3割削減している。
<京王自動車>
・以前からドライブレコーダーの映像確認や同乗教育を行っていたが、AIドラレコ導入によりさらに効率化。
・ドライバーの運転振り返りを習慣化するために、講習会での説明や「閲覧札」など独自の工夫を実施。
・注力項目の一時不停止を中心にリスク運転を大幅に削減し、2年で約3割の事故削減・一時停止不履行による事故0件に成功。
「事故削減に対する想いは同じ」
授賞式イベントの終盤には、受賞各社の取り組み内容を評価した審査委員から「事故対策の宝石箱」といったコメントがあったほか、受賞企業からも「各企業の発表を聞かせていただき、本当に本気度が凄いなと感じた。」「世の中から交通事故がゼロになるまで、ぜひここにいる皆さんと一緒に取り組んでいけたら」との今後への期待の声が伝えられた。

また、イベント参加者からは「事故削減に対する想いは同じで、困っていることも似たようなものがあり、私たちが自社で今後どうすればいいかを考えるヒントが得られた」「安全がどんなに大切なものなのかということを、一人ひとりが理解する環境をつくることが何よりも大切」とアワードの意図に共鳴する声も聞かれた。
同アワードの運営協力にあたる『DRIVE CHART』の事業責任者を務めるGO執行役員の川上氏は、「共有された各社のノウハウは、業界を問わず社用車を有する企業にとって非常に有益なもの。参加された方々が、ここで得た学びを活かして各社で更なる交通事故削減へ向けた工夫を行うことは、確実に日本の交通社会を良くしていくことに繋がる」とアワード開催の意義を強調。より多くの企業の参画を得て、2025年度以降も同アワードを継続開催していく考えを示している。