□対策のポイント:BCPで考えるべきポイント

現在、多くの企業で事業継続計画(BCP)を策定していることと思います。事業継続計画は本来、起こり得るリスクの種類を問わずに策定するものとされていますが、日本では地震を主な対象に策定を進めている企業が多いのが実情です。地震を対象にした場合、地震以外の災害(大雨や暴風・大雪など)の発生時でも一定程度の応用が可能ですが、対象を新型インフルエンザに代表される感染症にした場合には、違ったアプローチが必要になります。想定被害を「地震」をした場合との主な違いは以下のようなものです。

① 被害対象はほぼ「人」に限定される
② 感染症は海外由来のものが多く、国内発生まである程度の準備期間が得られる
③ 感染症は流行期間が長期化する場合がある。従ってBCPも長期間にわたる対策とそれに対応できる準備が必要になる
④ 被害が国内全域(または世界中)に広まることが予想されるため、地理的分散によるリスク低減策が有効にならない場合がある

感染症を対象としたBCPで考えるべきポイントは、業種・業態によって社会機能の維持のために事業の継続を要請される企業と、感染拡大防止のため事業活動の自粛を要請される企業が明確に分かれる点です。特に、不特定多数の人間が集まる場所や機会を提供している企業は、感染拡大防止の観点から、国や自治体が事業活動の自粛を要請する場合が多くなります。さらに、自社がいくら事業を続けようとしても、顧客が圧倒的に減少する(市場縮小)する場合もあります。また、事業を継続する際の効果的な感染防止策を行いにくいといった場合もあるかもしれません(例:「不特定多数との対面業務が必須である」「満員電車やバス等による通勤を避けるための時差出勤や、自家用車等での通勤を許可できない」「在宅勤務が不可能な業態」など)

もし、自社において、①事業内容が社会機能の維持に特段関係なく、②感染症が発生した際には顧客や売上の減少が避けられず、③効果的な感染防止策を取りにくい業態、であるならば、自主的に一時休業する判断も必要になってくるでしょう。その場合、企業の維持・存続のための収入をどのように確保するかの計画を立てておくことがBCPの主な内容になります。休業することなどで法律上の問題が発生しないかどうかをあらかじめ確認することも必要です。 新型インフルエンザの影響により業務を停止した場合、免責となるかどうかについて契約書や約款など確認し、必要に応じて取引先と協議・見直しを行っておく必要もあります。
海外への出張については、発生国への渡航はどうしてもやむを得ない場合を除き、中止すべきです。事例の場合、本日時点での中国への出張は慎重にならなければならないでしょう。また、以下の点などから発生国以外の海外出張も原則中止することが望ましいとされています。

・感染が世界的に拡大するにつれ、航空機等の運航停止により帰国が困難となる可能性があること
・拡大に伴い、感染しても現地で十分な医療を受けられなくなる可能性があること
・帰国しても最大 10 日間停留される可能性があること
 

今回のテーマ:「外部(ハザード)リスク」「経営者・管理職」

 

(了)