2025年の10大リスク(ユーラシア・グループ)

世界的なリスク調査会社であるユーラシア・グループは、2025年の10大リスクで「Gゼロ世界の混迷」を1位に挙げた。国際的な政治学者であり、同社の社長であるイアン・ブレマーが社長が警鐘を鳴らす「G20ゼロ」は、何を意味するのか。対応事例を含めて紹介します。

■事例:「Gゼロ世界」に対応する

経営企画部のAさんは、今週の社内会議で耳にした言葉に悩まされています。それは「Gゼロ世界の混迷」というもので、アメリカの調査会社のユーラシアグループ代表、イアン・ブレマー氏が提唱した言葉です。今週の会議ではそのことが話題の中心となりました。

Aさんにとって、それは初めて聞く言葉で、具体的な意味も、何をすべきかも理解できませんでした。

「うちの会社もこの『Gゼロ』に対応しなければならない。具体的な対策案を次回の会議で提案してほしい」と上司に言われたとき、Aさんは曖昧にうなずくしかありませんでした。

会議が終わり、さっそく「Gゼロ世界」を検索してみました。その結果、「地政学的リスクの高まり」「リーダー不在の国際社会」「企業が直面する新しい不確実性…」といった言葉が並んでいて、Aさんの理解はすぐには追いつきませんでした。

さらに、ネット記事や専門家の解説を読んでみたものの、どの記事を読んでも問題のスケールは大きく、結論は同じように曖昧に感じました。「企業はリスクを分散し、柔軟な戦略を…」とか「国際情勢の変化を注視し…」といったアドバイスが並び、それは確かに重要なことのように思えますが、具体的に自社に置き換えて何をすればよいのかは見えてきません。

他の人たちに意見をきいてみても、「確かにリスク分散って大事だけど、現実的にどうするのか?サプライチェーンを多国籍にするとか、言葉で言うのは簡単だけどコストがかかるし、現場も大変だろう」 「最新の情報収集と分析が必要って言うけど、結局何をどう分析すれば良いのか、具体的な指標がないと始めようがない」という意見が多く、考えがまとまりません。

Gゼロ世界——その言葉の響きがどこか遠い未来の話のようでありながら、目の前の業務の延長線上に突きつけられたようにも感じられます。参考に昨年のリスク管理計画書を見てみれば、その中には、既存の課題として「取引先の依存度の高さや自然災害リスク」が列挙されていました。

「これだって十分に解決できていないのに、Gゼロなんてさらに抽象的な問題にどう対応しろと言うんだ…」

Aさんは、漠然とした不安を抱いて頭を悩ませています。