人材採用のミスマッチを防ぐ手法に、採用段階で応募者にネガティブな情報も提供するRJP(Realistic Job Preview:現実的な職務プレビュー)があります。人材難のこの時代に有用な方法ですが、独特の難しさも存在します。この点を含めて、RJPを紹介します。
■事例:深刻化する人材難
Y社は設立して10年を迎える地方都市にある中堅規模のIT企業です。時代の波に乗って急成長を果たし、順調に案件を獲得し続けていました。しかしながら、ここ数年は人材難の波にのまれ、エンジニア不足が深刻化。案件の受注もままならない状況になってきました。 求人を出せば、そこそこの応募はあるものの、採用しても早期離職するケースが多く、社員の定着率の低さが悩みでした。
採用を担当しているAさんは、これまで何度も採用戦略を見直してきましたが、あまり効果は見られませんでした。
ある時、AさんはRJPという採用手法の存在を知りました。それは、応募者に仕事内容を事前に伝えることで、採用後のミスマッチを防ぐ手法でした。「これは使えるかも!」と考えたAさんは、すぐに自社の採用プロセスにRJPを取り入れることにしました。
まずは、面接で伝える情報を見直し、これまでは避けてきた仕事の困難な面についても説明することにしました。例えば、Y社は地方という立地のため、東京や大阪にある大手IT企業とは違って、少人数で様々な業務を遂行する必要が数多くあります。採用面接の際に、これまでならあえて説明しなかった情報を、一部オープンにすることにしました。
また、実際の業務を体験してもらうため、1日職場体験プログラムも導入しました。応募者にはプロジェクト会議にも参加してもらい、チームの雰囲気や仕事の進め方を体感できるようにしました。さらに、現場のエンジニアと直接話すセッションを設け、リアルな業務内容を正直に伝えました。
RJP導入効果は、すぐに現れませんでしたが、次第に応募者の反応が変わってきました。特に、地方に腰を据えて長く働きたいエンジニアからの関心が高く、Aさんが理想としていた人材が少しずつ集まってきました。
その後、数人の優秀なエンジニアが入社し、チーム全体のモチベーションも向上していきました。離職率も大幅に低下し、定着率が改善されたことでY社は再び安定した受注が可能になり、地方におけるIT企業としての地位を確立しつつあります。
Aさんは、RJPが単なる採用手法ではなく、企業と応募者との信頼関係を築くための重要なプロセスであることを身をもって体験しました。これからもRJPでの情報提供を続け、企業の成長を支えるエンジニアたちと共に、地方都市のIT業界を盛り上げて行こうと決意しています。
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