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リスクマネジメントにおける最大の課題は、中身のある取り組みの維持と言っても過言ではありません。今回は、継続的で有用な活動を実現するために、リスクマネジメントを企業文化として根付かせる具体的な方法を、事例をもとに紹介します。

■事例:形骸化したリスクマネジメントの克服

X社は、地方にある中堅企業です。地域経済を支える企業として知られており、取引先には大手企業も数多くあります。取引先からの要請もあり、X社では以前からリスクマネジメントに積極的に取り組んできました。

X社のリスクマネジメント担当部門の責任者であるAさんは「リスクマネジメントの手順やルールを整備しているにもかかわらず、最近、その仕組みが上手く機能していないのではないか?」と思っています。

以前、X社が正式にリスクマネジメントのフレームワークを導入し、一定の手順とルールを整えた時点では、社内でリスクマネジメントに対する盛り上がりがあったことを、Aさんは覚えています。しかし、時が経つにつれ、その対応は一部の限られた部門が行う業務になり、日常業務からは乖離していったのでした。

リスク管理に関する業務は、ベテラン社員からは「追加の負担」として敬遠され、新人や主要メンバー以外の社員が担当するケースが増えていきました。新人たちはリスク管理の重要性を理解し切れず、業務は形式的になりました。結果的に、リスクの本質に迫る対応がなされることはなく、見せかけだけの報告やマニュアル遵守に終始。

リスク管理が「特段重要ではない業務」として見なされ、主要な業務に埋め込まれない状態になっているのでした。リスクマネジメントが企業の成長や事業の成功に直結すると理解しているのは限られた人材だけで、多くの従業員にとっては「余計な仕事」とししか認識されていないようです。

Aさんは、「わが社のリスクマネジメントのプロセスや仕組みはしっかりとしているにもかかわらず、上手く機能していないように感じるのは、根本的な問題があるのではないか。リスクマネジメントには、企業の風土や文化も重要だと聞いたことがある。しかしながら、どのように醸成していくものなのか。どう取り組むべきなのか」と悩んでいます。