診断

臨床症状
急性例では、臨床症状や病理所見は豚コレラと酷似しています。ウイルスの病原性の強さにより、甚急性、急性、亜急性、慢性および不顕性と激しいものからまったく症状の認められないものまでさまざまです。死亡率もこれに伴い0~100%までと大きな幅があります。ウイルスが感染してから発病するまでの潜伏期間は、接触感染の場合、5~21日といわれていますが、ダニによる吸血や創傷部から直接血液中に侵入した場合はこれより短いようです。実験的に筋肉内に接種した場合、早ければ接種3日目に発熱のみ見られることがあるそうです。

病原学的診断
農林水産省で定められた診断方法には、遺伝子検査、ウイルス抗原検出、ウイルス分離および血清中の抗体検出などがあります。実際には、農研機構動物衛生研究部門海外病研究拠点(東京都小平市)で実施されます。

豚の臨床症状が酷似する豚コレラとの識別、すなわち類症鑑別が重要になります。剖検所見や臨床症状から豚コレラとASFを鑑別することは不可能で、鑑別にはウイルス学的検査が不可欠です。

専門的になりますが、サーコウイルス2型関連疾病、豚丹毒、サルモネラ症、他の細菌性敗血症など、皮膚の出血性病変や紅斑、紫斑を形成する他疾病との鑑別も重要です。高い致死率を示す高病原性PRRS、トキソプラズマ症や炭疽など、脾臓が著しく腫大する家畜の疾病との鑑別は特に注意が必要です。疫学的情報(発生状況)と解剖所見でASFを疑うことは可能ですが、診断には必ず定められた診断機関においてウイルス学的検査を実施する必要があります。

国内で診断された場合の措置
ASFワクチンや予防薬、治療薬は開発されていません。日本国内の養豚場でASFと診断された場合、「アフリカ豚コレラに関する特定家畜伝染病防疫指針」に従って、速やかに当該養豚場で飼育されている全ての豚を殺処分し、豚の死体、飼料、飼育に関連する物品の埋却あるいは焼却などの措置がなされます。同時に、豚舎を含む養豚場全ての施設・設備の徹底的な消毒も行われます。ウイルスの飛散を防ぐための半径3キロの移動制限が実施されます。

消毒には、以下に紹介する消毒薬が用いられます。ASFウイルスは、他のウイルスに比べると、消毒薬に強い抵抗性を示す特徴を持っています。強い殺菌力を持つ2〜3%の塩素系またはヨード系消毒薬の30分間作用により感染力を消失します。防カビ剤である3%オルトフェニルフェノールの30分間処理も有効です。そのほか、2%以上の次亜塩素酸ナトリウム、ホルマリン、グルタールアルデヒド、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、β-プロピオラクトン、逆性石鹸、界面活性剤、アルカリ塩類、市販のビルコンも有効です。

豚舎の汚泥、糞便等の消毒には0.5〜1%水酸化ナトリウムまたは水酸化カルシウムが有効です。豚、飼料、敷材などは焼却または埋却しますが、加熱処理も有効で、少なくとも70度、30分間以上または80度、3分間以上の加熱によりウイルスは失活します。血清や体液には 60度、30分間以上の加熱が有効です。pH(水素イオン指数) 3.9未満の酸またはpH11.5を超えるアルカリ処理も有効です。