アフリカ豚コレラ発生の歴史

ASFウイルスは、元々サハラ以南のアフリカ大陸において、イボイノシシなどのイノシシとダニの間で感染を繰り返すことにより維持されてきました。イボイノシシはASFウイルスに感染しても発病しません。歴史的に帝国主義の時代といわれた時期に、ヨーロッパからアフリカへ移住した人々が多くの家畜を持ち込みました。アフリカで、ASFウイルスの感染を受けたこのウイルスに抵抗性を持たないヨーロッパ由来の豚が、高率に死亡する事例が多発して、そこで初めてアフリカにはASFという高い死亡率をもたらす疾病の存在することが明らかになったのです。

1950年代後半から、ASFウイルスのアフリカからヨーロッパへの拡散が起こり、さらに1970年代には中南米の国々でも本病が発生し(現在は発生していません)、これらの国々の養豚業界に多大な被害をもたらしました。一方、2007年以降、ウイルス汚染厨芥(ちゅうかい、食べ物の残りなど)を介して、ASFウイルスはグルジアに侵入し、アゼルバイジャン、ロシア、ウクライナなど東欧にASFの発生は広がりました。本病によるロシアだけの被害総額は、2007年から2012年までに約250億円に達したといわれています(図1)。

その後、ASFウイルスはさらに拡散を続け、アジアにまで広がりました。2018年8月に中国に侵入し、中国では莫大な被害を被りつつあります。すでに120万頭以上の豚が殺処分されているようです。ASFウイルスは、多くのアジア諸国にも侵入して猛威を振るっており、いつ日本国内にこのウイルスが侵入してもおかしくない状況になっています(図2)。