アジア諸国での発生

2018年8月1日、中国遼寧省の8116頭の豚が飼育されていた養豚場で47頭死亡し、死亡豚がASFに罹患していたと診断されたのが、中国でのASFの初発生、すなわちアジアで初めてのASF発生でした。その後、中国国内での発生は急激に増加して、ほぼ中国の全土にASFウイルスは拡散してしまいました(図2)。これまで中国国内でASFに罹患した豚の正確な頭数は不明ですが、すでに120万頭をはるかに超えており、中国の養豚産業および食品業界は深刻な打撃を被っています。中国でも、ASF発生養豚場では飼育されていた豚は全て殺処分され、養豚場の消毒がなされているということです。それにもかかわらず、短い間に中国ほぼ全土にASFウイルスが拡散してしまいました。その原因を知りたく思っていますが、筆者はそのことに関する情報に全く接していません。不明のまま残されています。

公表されている中国行政機関の防疫対応ですが、政府作成による「アフリカ豚コレラに関する緊急実施指針」に従い、政府指揮団をASF発生現地に派遣し、発生地を封鎖して、全ての豚及びASFウイルス感受性動物と畜産物の封鎖区域への出入り禁止などの措置を講じ、発生養豚場などで飼育されている豚の殺処分、消毒などが実施されているようです。

しかし、2019年に入り、アジアでのASF発生の拡大は続いています。すなわち、モンゴル(1月)、ベトナム(2月)、カンボジア(4月)、香港(5月)、北朝鮮(5月)、ラオス(6月)、ミャンマー(8月)、フィリピン(9月)(図2)、韓国(9月)でASFが次々に発生しました(図3)。

どのような経路でASFウイルスがこれらの国々に拡散したのかぜひ知りたいところですが、まだ事を把握されていないようです。2019年9月末日現在、幸いにも日本国内にASFウイルスは侵入していないと考えられる状態にあります。

いずれにしても、ASFウイルスのこれ以上の感染拡大を阻止するための、国を越えた緊密な取り組みが必要になっています。