紅斑熱群リケッチア症は、前回紹介したツツガムシ病に類似した疾病で、ダニによって媒介される一連のリケッチア感染症のことです。アメリカのロッキー山紅斑熱、地中海沿岸諸国におけるボタン熱などが代表的な疾病として知られています。紅斑熱群リケッチア症の多くは世界的に広く分布しています。近年、アフリカ、中国、タイなどにおいてもこれらの疾病が見つかっています。
日本国内でも1984年に徳島県阿南市で発見されています。最初に診断した馬原文彦医師はこれを日本紅斑熱と命名することを提唱しました。原因菌のリケッチアは、徳島大学医学部内田孝宏教授(当時)らにより分離され、リケッチア ジャポニカ(Rickettsia japonica)と命名されています。
病原体のリケッチアはマダニによって運ばれ、人は野山に入りその有毒化したマダニに刺咬されることにより感染します。媒介者であるマダニは、日本各地に広く生息しています。マダニに刺された部位の刺し口と発熱、発疹が主な症状です。
マダニに刺されて感染する病気としては、7月と8月の本連載で紹介した重症熱性血小板減少症候(SFTS)やライム病、Q熱、ボレリア症、野兎病などがあります。症状はツツガムシ病に似ています。
本病は、感染症新法では4類感染症に指定されており、診断した医師から保健所への届け出が義務づけられています。
日本紅斑熱の発生
前述のように、紅斑熱群リケッチア症は広く世界に分布しています。日本国内では「日本紅斑熱」ですが、名前から推察されるように、日本に特有な疾患です。また国内を感染推定地域とするその他のリケッチア病として、極東紅斑熱をはじめとする複数の紅斑熱群リケッチア症、ノミ媒介の発疹熱などが知られています。
日本国内においては、輸入感染症(本来日本国内に存在しない病原体が海外から持ち込まれることで発生する感染症)としても、クインズランドマダニチフス、African tick bite feverなどの各種紅斑熱群リケッチア症が報告されています。
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