2019/03/20
レジリエントな社会って何?
サーバ室は、水没した庁舎の1階に設置されていたため、そこにあったすべての機械(経済的資本)が使用不能となりました。サーバ室内に保管してあったバックアップテープを含む、すべてのデータ(●●資本:D)が一時的に失われる事態となりました。水に漬かったサーバ類を同じ場所で修復することが不可能だったため、災害対策本部が設置された中央公民館(経済資本)において、業務に必要な情報システム、およびICT環境を一から作り直すことになりました。3月25日、大槌町と岩手県の職員、大槌町が情報システムの管理を委託している事業者の担当者が、庁舎内のサーバ室に入り、基幹系システムのサーバなど7台を回収しました。そして、ハードウエア事業者に、サーバ内のデータのサルベージを依頼しました。結果として、ハードディスクから復旧できたデータ、できなかったデータ、ハードディスクからは復旧ができなかったけれども、サーバ室内に残されていたバックアップテープから復旧されたデータに分かれました。
4月13日、サルベージが完了した住基データ(3月11日時点のもの)を使用して、仮サーバが設置されました。仮サーバのハードウエア(経済資本)は、情報システムの管理委託ベンダーから提供されました(●●資本:E)。これにより、大槌町は証明書発行を行う窓口業務を再開しました。4月25日に仮設庁舎が開所すると、サーバ機器類は公民館に残され、住民窓口と職員の執務室が仮設庁舎に移されました。
さて、DとEの資本は何でしょう? Dはデータです。「キャピタルの種類と定義」の表の右を見てください。そうですね、これは「組織資本」に当たります。Eはどうでしょうか?管理委託会社(ベンダー)からサーバが提供されたというくだりです。管理委託会社から提供されたハードウエアはモノですから経済資本ですが、ベンダーとの社会的なつながりによって実現したことですので、これは「社会関係資本」の働きとします。
大槌町では、地震と津波の発生後、災害対策本部が庁舎から中央公民館に移転し、さらに地震から約1カ月半後には役場機能が仮設庁舎に移りました。庁舎内にあったサーバ室は中央公民館に移りました。サーバ類は仮設庁舎開所後も公民館に残り、2カ所を結ぶネットワークシステムが構築されました。
レジリエントな社会って何?の他の記事
おすすめ記事
-
なぜ製品・サービスの根幹に関わる不正が相次ぐのか?
企業不正が後を絶たない。特に自動車業界が目立つ。燃費や排ガス検査に関連する不正は、2016年以降だけでも三菱自動車とスズキ、SUBARU、日産、マツダで発覚。2023年のダイハツに続き、今年の6月からのトヨタ、マツダ、ホンダ、スズキの認証不正が明らかになった。なぜ、企業は不正を犯すのか。経営学が専門の立命館大学准教授の中原翔氏に聞いた。
2024/11/20
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/11/19
-
ランサム攻撃訓練の高度化でBCPを磨き上げる
大手生命保険会社の明治安田生命保険は、全社的サイバー訓練を強化・定期実施しています。ランサムウェア攻撃で引き起こされるシチュエーションを想定して課題を洗い出し、継続的な改善を行ってセキュリティー対策とBCPをブラッシュアップ。システムとネットワークが止まっても重要業務を継続できる態勢と仕組みの構築を目指します。
2024/11/17
-
-
セキュリティーを労働安全のごとく組織に根付かせる
エネルギープラント建設の日揮グループは、サイバーセキュリティーを組織文化に根付かせようと取り組んでいます。持ち株会社の日揮ホールディングスがITの運用ルールやセキュリティー活動を統括し、グループ全体にガバナンスを効かせる体制。守るべき情報と共有すべき情報が重なる建設業の特性を念頭に置き、人の意識に焦点をあてた対策を推し進めます。
2024/11/08
-
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2024/11/05
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方