さて、今回ご紹介する事例は、筆者が2011年11月から2012年3月にかけて、(財)地方自治情報センター(当時)と共同で実施した「東日本大震災における地方公共団体情報部門の被災時の取組みと今後の対応のあり方に関する調査研究」から紹介させていただきます。
https://www.j-lis.go.jp/rdd/chyousakenkyuu/cms_92685924.html

本調査では、岩手県・宮城県・福島県内の13市町(【岩手県内】宮古市、陸前高田市、釜石市、大槌町、【宮城県内】仙台市、気仙沼市、東松島市、石巻市、南三陸町、【福島県内】いわき市、南相馬市、双葉町、浪江町)の情報部門を訪問して、東日本大震災において情報通信技術(ICT)が受けた被害およびその復旧プロセスについて、聞き取りを行いました。まずは大槌町のケースを取り上げます。

役場機能を数回移転せざるを得なかった大槌町

岩手県の大槌町は、東日本大震災で最も被害を受けた自治体の1つでした。津波は町のおよそ半数の建物に到達し、町を破壊したのです。大槌町の本庁舎(●●資本:A)はコンクリートブロック造の2階建で、海岸線に近いところにあったため、津波に飲み込まれました。地震が発生した直後、本庁舎の前にあった広場に災害対策本部が設置されました。そこで幹部を含む職員が対応会議を行っていたところの津波襲来だったため、町長を含む多くの職員(●●資本:B)が被災しました。137人いた職員の3分の1(人的資本)を失ってしまいました。
庁舎が浸水し使えなくなったため、町内の高台にある中央公民館に災害対策本部が移り、震災から約1カ月以上が経過した4月25日に、中央公民館横の小学校校庭に仮設庁舎(●●資本:C)が開所しました。この小学校は、地震発生後に発生した山火事の影響を受け、廃校となっていたものです。

さて、A~Cにはどの資本の名称が当てはまるでしょうか。Aは、庁舎という建物です。冒頭の6つの資本の表「キャピタルの種類と定義」を思い出してください。「建物資本」というキャピタルの種類はありませんが、表の右列に「経済的価値を生み出す、物理的な生産(製造)物」とあります。これを「経済資本」と呼びます。Bは、職員ですから人間資本。Cも建物なので経済資本です。

大槌小学校校庭に設置された仮設庁舎(2011年12月15日筆者撮影)