第8回:創造的対応への道 その2
日頃から社会関係資本を構築しておく
国際大学GLOCOM/
主任研究員・准教授、レジリエントシティ研究ラボ代表
櫻井 美穂子
櫻井 美穂子
ノルウェーにあるUniversity of AgderのDepartment of Information Systems准教授を経て2018年より現職。博士(政策・メディア)。ノルウェーにてヨーロッパ7か国が参加するEU Horizon2020「Smart Mature Resilience」に参画。専門分野は経営情報システム学。特に基礎自治体および地域コミュニティにおけるICT利活用について、レジリエンスをキーワードとして、情報システム学の観点から研究を行っている。Hawaii International Conference on System Sciences (2016)およびITU Kaleidoscope academic conference (2013)にて最優秀論文賞受賞。
櫻井 美穂子 の記事をもっとみる >
X閉じる
この機能はリスク対策.PRO限定です。
- クリップ記事やフォロー連載は、マイページでチェック!
- あなただけのマイページが作れます。
これまで、日常業務で培われる知識やシステムへの「慣れ」(=ドメインナレッジ)が不測の事態への適応能力を促進することができるとご紹介してきました。また、前回では、システムの観点から各構成要素をつなぐ「のり」としての役割を果たす組織資本、つまりデータベースなどを誰でも使えるようにしておく(=共有財産として、一定のルールのもとに管理する)ことが大事ということもお伝えしました。組織内、あるいは異なる組織間における共通の組織資本や災害対応に携わる各個人のドメインナレッジが、現場で上手く組み合わさることで、創造的対応が実行されやすい環境となります。
一方で、組織資本は、システムにおける「のり」ですので、単体では能力を発揮することができません。経済資本や、人間資本、時にはシンボル資本の存在が、組織資本が力を行使するために必要となります。例えば、東日本大震災のいくつかの事例では、情報システムの管理を委託している事業者や、過去に災害の経験のある自治体などが、復旧プロセスに欠かせないデータを展開するためのサーバやパソコン(いずれも経済資本)を無償で提供していました。
事例の中では詳しくご紹介できませんでしたが、応援職員という形で、人間資本である職員を被災地に派遣して、災害対応業務に従事してもらった自治体も多くありました。ここに登場した自治体と事業者は、日頃情報システムの運営や管理のために付き合いがあり、その期間も数年から長いケースでは十数年というところもありました。
また、双葉町が行政機能を移転した「さいたまスーパーアリーナ」に、パソコンとプリンタを提供した新潟県刈羽村は、双葉町とは事前のつながりはありませんでした。同様に、応援職員の派遣に関しても、都道府県単位で調整がなされたため、必ずしも日頃付き合いのある自治体同士での職員派遣という形にはなりませんでした。
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方