□対策:法改正の意図を共有すること

一部の「外交的圧力による法改正」を除けば、法律は、社会に問題が発生し、その問題を解決することを意図して改正されることがほとんどといえます。
自社に関係する法規制の改正が行われる場合、コンプライアンス違反防止のために社内での情報共有は必須ですが、その際、法改正の意図も併せて共有することが重要です。なぜなら、人は理由も分からず一方的に「法律を守れ」と言われるより、その意図や目的を説明された上で「だから、法律を守れ」と言われたほうが腹に落ちて、理解が進むからです。これは社内でコンプライアンス教育をする上でのポイントでもあります。

さて、事例にあるA社長の判断はどうでしょうか? 経営者として「利益を追求する」気持ちは分からなくもありませんが、この判断こそ「目先の利益」のみの追求に終わり、長い目で見た企業の「信用」を失うことにつながっていくかもしれません。

今回の働き方改革関連法の施行には、将来の日本の深刻な労働力不足がその背景にあります。その解消策として「働き手を増やす」「出生率の向上」「労働生産性の向上」に取り組むというのが施行の目的です。その目的に照らしたときに、自社でどのようなことが行えるか、将来のために自社がどのような役に立てるかを判断することが経営者の役割といえるでしょう。
また、社員の中から労働時間の実態について告発する人が出てきたり、その告発によりメーカーから取引先としての信用を失い、取引から除外されることなどは容易に想像できるリスクといえます。

今回のリスク:主に経営層・管理職が注意すべきハザードリスク

 

(了)