場外乱戦的な価値対立の真偽をどう見極めるか(写真:写真AC)

美徳なのか偽善的越権行為なのか

世界から称賛される日本人サポーターの客席清掃(写真:写真AC)

スポーツにまつわる場外乱戦、まずはワールドカップサッカーに関わる内容のうち、日本が本来胸を張るべき事項から論じたい。代表格は試合後の会場におけるサポーターによる清掃作業であろう。同様に代表選手のロッカー使用後のきれいさも、日本の美徳として世界に称賛されている。

ただ、なかには美徳といわず、偽善として酷評し批判する論も存在する。その代表例をいくつかあげて、是非を考えてみよう。

一つが、清掃員の仕事の領域を侵すな、生業を奪うべきではないという主旨の論である。世界ではいまだ身分社会の構造が色濃く、清掃員という与えられた役割をその役にない階層の観戦者が清掃してしまうことで、雇用の喪失を招くというのだ。

清掃員の仕事を奪うという指摘(写真:写真AC)

あるいは「韓非子の侵官之害」に表現されるような越権行為と判断されるのであろうか。たとえよかれと思ってやった行為(王に冠をかぶせる係が、王が風邪をひかないよう寝ている王に衣をかぶせた行為)でも、職分を越えた行為には厳罰を与えられるべきというのだろうか。

もう一つは、偽善として「気持ちが悪いからやめてほしい」といい放つ内容だ。自発的な行為ではなく、周りの目を気にしてやらされての偽善行為だという指摘であり、その根拠は、試合後のスタジアムなど注目が集まる場所では清掃していても、他の場所ではごみを捨てる行為を同じ人間が平気で行っているという現実からの指摘である。

これらの論をどう考えるべきなのだろうか。