フジテレビ異例の長時間会見を考える
第81回:【緊急投稿】危機管理担当者は何と対峙すべきなのか

多田 芳昭
一部上場企業でセキュリティー事業に従事、システム開発子会社代表、データ運用工場長職、セキュリティー管理本部長職、関連製造系調達部門長職を歴任し、2020年にLogINラボを設立しコンサル事業活動中。領域はDX、セキュリティー管理、個人情報管理、危機管理、バックオフィス運用管理、資材・設備調達改革、人材育成など広範囲。バイアスを排除した情報分析、戦略策定支援、人材開発支援が強み。
2025/02/10
再考・日本の危機管理-いま何が課題か
多田 芳昭
一部上場企業でセキュリティー事業に従事、システム開発子会社代表、データ運用工場長職、セキュリティー管理本部長職、関連製造系調達部門長職を歴任し、2020年にLogINラボを設立しコンサル事業活動中。領域はDX、セキュリティー管理、個人情報管理、危機管理、バックオフィス運用管理、資材・設備調達改革、人材育成など広範囲。バイアスを排除した情報分析、戦略策定支援、人材開発支援が強み。
さて、先日のフジテレビによる10時間24分という長時間の会見をご覧になられた方はどうお感じだろうか。特に企業のコンプライアンス・危機管理・リスクマネジメントに携わる方々にとっては目を背けることができない事案であり、憤りすら感じる方も少なくないだろう。
今回は、予定を変更して、この話題に関して法令遵守の範囲に縛られず、企業風土改善による再発防止という観点で語らせていただく。それゆえ、事案の真相や是非はいったん横において語ることをお許しいただきたい。
語らせていただく視点として、次の3点をあげたい。
➊会見自体のあるべき姿、リスクコミュニケーションの実相
➋危機管理プロセスとしてのあるべき姿
➌再発防止の観点では何を論議すべきか
まず➊に関してだが、同社がポリシーとして「被害女性のプライバシーを守る」を貫き「できる限り少人数で進めたい」という意思から、最初の会見はカメラを入れず非公開で行った。批判が集中すると、2回目は質問が尽きるまで終わらない姿勢になった。それでも、相変わらずポリシーを守っての応答回避が目立っていた。
確かに会見での質問は、ゴシップ記事的追及で、記者自身の主義主張を押し付けて同意しない限り許さないと感じるものが多かった。これでは、質問に真摯に向き合ってコミュニケーションを図ることが困難である。しかし、実はこの追及の構造は、これまでマスメディアが取材と称してつくり上げ、政府批判や不祥事を起こした企業に向けてきた「報道」と称する活動の行きつく先だ。
そしてこの構造はネットの情報空間にも波及し、自己の主義主張を押し付け、客観的事実や論理性を無視した誹謗中傷がまん延している。ただ、ネット空間ではまだ論理的な主張や情報発信も少なからずあり、せめぎ合っている状態だが、リアル空間ではこの追及の主役がマスメディア以外になく、より過激になっているというのが筆者の感想である。
本来であれば、質問側もコンプライアンスや危機管理、あるいは品質保証の専門家の意見を取り入れて、事態の解明や要因分析、対処策と再発防止などの本質的な問題を質すべきである。その結果、わかっていることとわかっていないこと、何が悪くどう考えているかとその問題点、再発防止に至るプロセスにおける現在地点を明確にする必要がある。これには前記の専門知識とオープン・クローズクエッションのテクニックが必須だが、正直、その種の訓練は行われていないと想像する。
そのノウハウが取材記者になく、先日の会見のような活動が繰り返されるなら、吊るし上げて溜飲を下げるだけの魔女裁判にほかならなくなる。企業はこの構造をふまえたリスクコミュニケーションのあり方を真剣に考える必要があるだろう。
一つの案は、記者会見以前に、各専門家の意見を取り入れた再発防止策の発信を能動的に行うことである。それもスピード重視で。先手必勝の時間勝負になるが、その時間はあったはずだ。
再考・日本の危機管理-いま何が課題かの他の記事
おすすめ記事
新任担当者でもすぐに対応できる「アクション・カード」の作り方
4月は人事異動が多く、新たにBCPや防災を担当する人が増える時期である。いざというときの初動を、新任担当者であっても、少しでも早く、そして正確に進められるようにするために、有効なツールとして注目されているのが「アクション・カード」だ。アクション・カードは、災害や緊急事態が発生した際に「誰が・何を・どの順番で行うか」を一覧化した小さなカード形式のツールで、近年では医療機関や行政、企業など幅広い組織で採用されている。
2025/04/12
防災教育を劇的に変える5つのポイント教え方には法則がある!
緊急時に的確な判断と行動を可能にするため、不可欠なのが教育と研修だ。リスクマネジメントやBCMに関連する基本的な知識やスキル習得のために、一般的な授業形式からグループ討議、シミュレーション訓練など多種多様な方法が導入されている。しかし、本当に効果的な「学び」はどのように組み立てるべきなのか。教育工学を専門とする東北学院大学教授の稲垣忠氏に聞いた。
2025/04/10
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/08
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/04/05
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方