安否確認の重要性

対策本部が立ち上がったら、いよいよ何をしなければならないか考え順序を決め行動に移る。その際の体制は当然、事前に決めておかなくてはいけない。先ほども触れたが、現地の公館にはすべてマニュアルがある。マニュアルというのは、やらなければならないことがすべて書かれているため不可欠だが、あとは状況によって、できること、できないことが存在するので、現地を総括する人のかじ取りが非常に重要になる。

地震等が起こった際の私どもの現地における体制では、まず現地にいる邦人の安否確認を行う。昨年4月のネパール地震では1500人ぐらいの安否確認を行った。在留邦人の長期滞在者については在留届のデータを元に安否確認できるが、短期滞在者は、「たびレジ」登録者以外では、現地にいるか、いないかがわからないため、非常に手間と時間がかかる。ネパール地震の際には、在留邦人1000人、短期滞在者が500人だったが、奇跡的に地震発生後約1週間で、全員の安否が確認できた。

繰り返しになるが、短期滞在者については、全員が「たびレジ」に登録してもらっていると登録者に電話やメールを利用して安否確認できるが、「たびレジ」に登録されていない方には連絡手段がない。このため、日本人が泊まりそうなホテルをすべて洗い出し、さらに、旅行会社にもツアー客がいないかすべて照会をかけた。登山者も多いので、トレッキングを扱っている旅行会社500社にも全て電話をかけた。そのほか、Facebookなどもチェックし「私、無事だった。あそこの所で危なかったけど」というようなことをつぶやいている人を見つけ安否確認を行ったケースもあった。

安否確認で重要なのが対応にあたる人員をどれだけ配置できるかで、多ければ多いほど迅速に作業が進む。ネパールの時は約10人を安否確認だけに配置した。

私どもが現地の対策本部で行うことは主に、安否確認、被害者の対応、家族への対応、プレスへの対応、外部からの照会に対する対応、そして情報収集、本省との調整や報告である。また、現地の対策本部や外務省においていかに迅速に情報共有することができるかが重要になる。外務省には海外緊急展開チームがあり、これは、領事、プレス、語学(英語・フランス語・中国語・アラビア語を中心)担当として即応できる本省や在外公館の職員68人により構成されている。

あまり考えたくないことだが、ご遺体が綺麗な形で出てくるとは限らないので、ご遺体の同一人確認のため、安否確認ができていない方の人定事項が必要になってくる。氏名、年齢、手術痕や傷、アザなどの身体的特徴など。また、最終的には、血液型、歯のレントゲン写真、指紋、あるいはDNA鑑定により同一人確認を行うことになる。

もう1点、緊急事態対応を想定して肝心なのが訓練だ。ネパールに行った時には、すごく早く対策本部が設営されており感心した。通常は、パソコンや配線コードが足りないなどの問題が起きるものだが、たまたま地震前の1~2週間前に訓練を実施していたおかげで、必要なものがすべて整って迅速に対応できた好例でもある。