次に図2は、「従業員は自組織をサイバー攻撃の脅威から守るための、自らの役割を理解している」と考えているCISOの割合を国別に表したものであり、日本、ドイツ、UAEが上位となっており、逆にシンガポールとオーストラリアが並んで下位となっている。

画像を拡大 図2. 「従業員は自組織をサイバー攻撃の脅威から守るための、自らの役割を理解している」と考えているCISOの割合(出典:Proofpoint / 2021 Voice of the CISO Report)

近年は何らかの形で人をだましてファイルを開かせたりウェブサイトにアクセスさせるなど、組織内の人手を介する手口が使われることが増えているため、そのような攻撃をかわすために従業員が自らの役割を理解していることは非常に重要である。しかし一方で攻撃者の手口も巧妙になってきており、従業員がだまされてしまったり、対処を誤ることによって攻撃を成功させてしまうリスクをなくすことはできない。

本報告書によると、CISOの多くは従業員が役割を理解しているものの、適切に対処するためのスキルや装備(注2)が十分でないという課題を認識しているという。また、回答者の58%は、サイバーセキュリティーの観点で組織における最大の脆弱性はヒューマンエラーであると認識しているというデータも示されている(注3)。さらに在宅勤務の増加によって、サイバーセキュリティー担当部門から個々の従業員に対するサポートが困難になっているため、従業員が自力で対処する必要性が高まっているという課題も指摘されている。

本報告書の後半部分では、パンデミックによる在宅勤務の増加や勤務形態の多様化をふまえて、今後のサイバーセキュリティー対策を中長期的にどのように考えていくか、CISOがどのような課題認識をもっているかを尋ねた結果などが示されている。

近年はサイバー攻撃によって企業の事業中断や社会インフラの機能停止が発生した例が報道される例も増えており、サイバーセキュリティーと危機管理や事業継続との関連性がより深くなってきている。ぜひ本報告書をきっかけとして、CISOやサイバーセキュリティー担当者との間で連携を深めていただければと思う。

注1)調査対象国は米国、カナダ、英国、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、スウェーデン、オランダ、アラブ首長国連邦(UAE)、サウジアラビア、オーストラリア、日本、シンガポールの14カ国。

注2)原文では「end users are not adequately skilled or equipped for cyber defense」と表現されており、ここで「equpped」はサイバーセキュリティー対策のためのソフトウエアツールが備えられることを指すと考えられる。

注3)国別に見ると米国が最も高くて75%となっており、日本は65%で5位である。