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今回紹介させていただくのは、世界最大級の保険・再保険ブローカーであるAonが2024年7月に発表した「Business Decision Maker Survey」である。Aonはさまざまな調査報告書を定期的に発表しており、本連載でもたびたび紹介させていただいているが、これは同社が今回初めて発表するものである。

本報告書は副題が「C-Suite and Executive Leaders on the Megatrends Impacting Risk and People Issues」となっており、さまざまなリスクや人的課題に影響するメガトレンドに対して、経営層がどのように意思決定をしようとしているかを探るものである。

調査は2024年4月下旬から5月上旬にかけて、米国、カナダ、英国、ドイツ、フランス、イタリア、スペインにある、従業員数500人以上の企業の経営者812名を対象として、オンラインでのインタビューにて実施されたとのことである。本報告書は下記URLから無償でダウンロードできる。
https://www.aon.com/en/insights/reports/business-decision-maker-survey

(PDF 19ページ/約 1.4 MB)


本報告書で主に扱われているメガトレンドは「Trade」(取引)、「Technology」(技術(主にIT))、「Weather」(気候)、「Workforce」(人材)の4つであり、これらに関してさまざまな観点から経営者に質問した結果がまとめられている。これらの中から筆者が特に注目したデータをピックアップして紹介させていただく。

図1は取引に影響を及ぼすリスクの上位2つを尋ねた結果である。色が薄い方のバーが米国、濃い方のバーが欧州からの回答結果となっており、米国と欧州で差異があるのが興味深い。

画像を拡大 図1.  取引に影響を及ぼすリスク (出典:Aon / Business Decision Maker Survey)


特に米国と欧州との間で違いが目立つのが、「Supply Chain / Distribution Failure」(サプライチェーンや流通の途絶)と「War / Political Instability」(戦争や政治的不安定性)である。本報告書ではこれらに関する分析は特に書かれていないので、ここから先は筆者の推測になるが、前者に関しては大規模なサプライチェーンを伴う産業(例えば自動車、航空、半導体など)に関連する企業が米国に多いということかもしれない。また米国は国土が広いため、国内の輸送に関してもリスク要因が多いということも考えられる。後者に関しては、欧州の方がウクライナやイスラエルから地理的に近いことや、旧宗主国としてアフリカ諸国との繋がりが多いことなどが影響していると思われる。

また、これらに比べると差が小さいものの、「Exchange Rate Fluctuation」(為替レートの変動)においても差が目立つ。これはもちろんEU圏内の取引が為替レートの影響を受けないことの現れであろう。