さまざまな国際規格を発行している国際標準化機構(International Organization for Standardization/ISO)は、各種マネジメントシステム規格による認証取得件数を集計して毎年発表している。今回はその最新版である「ISO Survey 2022」をもとに、世界各国におけるマネジメントシステム規格の普及状況を見ていきたいと思う。
「ISO Survey 2022」は報告書としてまとめられているのではなく、集計結果をまとめたExcelファイルのみが提供されており、下記URLから無償でダウンロードできる。
https://www.iso.org/the-iso-survey.html
まず図1は、ダウンロードしたExcelファイルの最初のシートに掲載されているもので、2022年末時点での各規格ごとの認証取得件数である。「Total valid certificates」が認証取得件数、右側の「Total number of sites」は認証取得の対象となっている事業所数である。例えば本社の他に2ヶ所の工場を抱える企業が、企業全体として認証を取得した場合、認証取得件数は1、事業所数は3とカウントされることになる。
おそらく当サイトの読者の皆様が最も関心をお持ちなのは、事業継続マネジメントシステム(BCMS)に関する規格「ISO 22301」であろう(そうでもないかもしれないが)。図1ではISO 22301の認証取得件数が全世界で3200件ということになっており、情報セキュリティマネジメントシステムの ISO/IEC 27001 の 20分の1未満、品質マネジメントシステムの ISO 9001 と比べると実に395分の1である。他の規格と比べて歴史が浅いとはいえ、まだまだ普及が進んでいないことを再認識させられる数字である。
次に国別の比較を見ておきたいと思う。図2はISO Survey のデータを使って各国・地域別の比較をできるよう整理したものである。実際のデータには194カ国のデータが掲載されているが、筆者の関心に基づいて取捨選択させていただいた。
ISO 22301 の数字に注目して見ると、この規格の前身となったBS規格を開発した英国の数字が多いことに驚きはないが、インドや中国と並んでギリシャが200件台に並んでいるのは意外であった。これらに続く100件台にはイタリア、韓国、シンガポール、スペイン、UAEが名を連ねており、日本は64件ということになっている。シンガポールでは日本よりも早く事業継続に関する国家規格が制定されるなど、金融関係を中心に早くから取り組みが進んでいたので、以前から認証取得件数が多かったが、これ以外の国々でも着々と増えてきたという印象である。
日本国内の認証取得件数に関しては別のデータがある。日本で運用されているBCMS適合性評価制度の中心となっている、一般社団法人情報マネジメントシステム認定センター(ISMS-AC)のWebサイトでは、国内で認証を取得した組織を検索できるようになっている(注1)。こちらのデータによると、本稿執筆時点で認証取得件数は91件であり、図2の数字とはかなり開きがある。
筆者はこのサイトの情報は年に数回チェックしているのだが、数年前から90件台のなかで上下しているだけで大きな変化はない。したがってISO Survey 2022の集計時期である2022年末の時点でも30件近く開きがあることになる。なぜこのような差異が発生しているのか不明だが、もしかしたら他の各国・地域のデータについても、このくらいの誤差(?)はあるのかもしれない。
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