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今回も、前回に続いて世界最大級の保険・再保険ブローカーであるAonによる調査報告書を紹介させていただく。タイトルからお分かりいただけると思うが、今回紹介させていただく報告書は保険市場の状況を四半期ごとにまとめたもののうち、2024年の第2四半期に関するもので、2024年8月に発表された。下記URLから無償でダウンロードできる。

https://www.aon.com/en/insights/articles/global-insurance-market-overview-q2-2024
(PDF 142ページ/約 18.8 MB)


まず図1は、保険商品(product)ごとのトレンドを地域ごとにまとめて示したものである。ここで保険商品は図の下側に示されているように、自動車保険(automotive)、損害賠償責任保険(casualty / liability)、サイバー保険(cyber)、役員賠償責任保険(directors and officers)、財物保険(property)に分けられており、市場における状況が色分けで示されている。

画像を拡大 図1.  保険商品ごとの全体的なトレンド (出典: Aon / Q2 2024 Global Insurance Market Insights Report)


図1では中南米の財物保険が「Challenging」という赤色になっているが、これについて報告書中では、特にブラジルやメキシコなど、損害の影響を受けやすい地域に対して、保険料率の引き上げやキャパシティの制限が適用されていることなどが説明されている。

本報告書ではこのような図が各地域(アジア、欧州・中東・アフリカ、北米、中南米、太平洋)ごとに示され、それぞれ解説が記載されている。図2はアジアの状況を国ごとに示したものである。

画像を拡大 図2.  アジアにおける保険商品ごとのトレンド (出典: Aon / Q2 2024 Global Insurance Market Insights Report)


ここで日本に対して「Challenging」という赤色が多いのが気になったが、報告書本文中の解説には特に日本を名指しした言及はなかったので、過去の報告書と比較してみることにした(注1)

図3は同報告書の2024年第1四半期版に掲載されているデータである。財物保険のみ第1四半期から「Challenging」であったが、それ以外に関しては他の国々と同程度だったことが分かる。報告書に説明がないので、ここからは筆者の推測になるが、今年の第1四半期に発生した災害や事故などの影響で、保険(および再保険)の保険料率や引受の姿勢が変化したのかもしれない。

画像を拡大 図3.  アジアにおける保険商品ごとのトレンド(2024年第1四半期) (出典: Aon / Q2 2024 Global Insurance Market Insights Report)


なお図2で日本以外の状況を見ると、香港、シンガポール、中国においてはむしろ「Soft」の緑色が増えている。本報告書ではこのような変化を踏まえ、顧客向けのアドバイスとして、保険市場の環境が好転していることを利用して、保険契約を更新するタイミングでリスク移転プログラムの強化(enhancement)を検討することを推奨している。ここで「リスク移転プログラムの強化」とは、保険の限度額や免責金額、免責条項などを見直して、より有利な契約にしていくことを指している。