2017/01/17
誌面情報 vol47
Oral History06 星の数の多いのをリーダーに
日本毛織株式会社 代表取締役社長(当時) 富田勇一氏
聴取日:2000年7月6日
とにかく前に進んで行こう
日本毛織という会社は11月が決算です。その決算発表が1月23日の月曜日にセットされていたのです。その決算発表のときに出される人事案で、大幅な役員異動が予定されておったわけです。
みんな社長交代はないだろうとみていたのですが、たまたま私がそのときの社長になることが先に決まっておりました。発表が1月23日というのはどこにも漏れてなかったけれど、当時の上層部は非常にボルテージの高い状態だった。それが大変な地震。会社としても大変なことになりましたし、私自身、総務・経理担当の常務だったものですから、即自分の職務に関わってきました。
しかし、結局前に進まなければならない。株主総会をやるべき会社のビルも使えなくなっちゃいましたから、場所を探すことも含めて役員の交代などなど、とにかく前に進んでいこうと。
200人のうち出社は30人だけ
私が一番良かったと思うのは、かつての軍隊のように敵地にバラバラになった場合には星の数の一番多いのをリーダーにして、パチッとまとまるというね、あれと同じモノがきちっと機能しましてね。いろんな部門の人がバラバラッと集まったんですけども、当時の調査課長がいち早く出勤してきて、それがヘッドになって的確に情報を収集して、連絡するところはしてくれました。危機管理マニュアルがあったわけでもないのですが、これは大変良かったですね。私自身は自分の家のことと、母親が若干怪我をして、動きがとれなくて、結局、電話連絡だけでその日(1月17日)は暮れてしまったのです。
初日(会社に集まった人)が結局30人。当時、200人ぐらいいたので、そのうちたった30人しか来られなかったわけです。2日目は、私を含めて遠くからきた部長たちや、無理やりきた人を合わせて102人。ここでやっと対策委員会を作ってスタートしました。2月27日、28日の株主総会まで一瀉千里、ああでもないこうでもないと言いながらマニュアルもないままにいろいろなことをやりました。後から考えて、「こりゃしまった」ということはあまりない。最初に情報集中ということで数少ない人のところに全ての情報が集まるようにして、そこから指示が出せるようにしてきましたから。
善意なんてどこかに
神戸のビルは相当酷い状態になりました。一番困ったのは、果たしてこのビルがもう1回同じような地震がきたとしたら安全なのか、これが限界なのか判定をしなきゃならないことになった。
当時は(賃貸オフィスに)入りたい人たちがいっぱいいた。神戸製鉄さんまでが言ってこられた。それで「直したら、入ってくれますか」と言ったら「是非に」と。神戸もバブルが崩壊しまして、神戸市は新築ビルがガラガラなのはわかってます。今はみんな「貸してくれ、貸してくれ」と言ってるけれどもどうせオーバーオフィスになる。だいぶ迷ったのですが、長く迷ってるわけにいかないから、ベストの修理をしたんです。
今考えるときちっと契約し、ちゃんと10年間は入って下さいよとか契約前に退転したらペナルティーを課すとか。いくら「困っているときはお互いに」と言っても人が替わったら、そのときの善意なんてどこかに行っちゃって。当時、人助けでやったところはみんな早々と場所ができたら出て行ってしまいましたから。後々そのビルをどうするか計画が立たないままに2~3年過ぎた、ちょっと残念なことになりました。それが経営側の1つの失敗だったと思います。
サテライトの重要性
(1991年に本社を神戸から大阪に移して)たまたまそうなったのですが、地震とか災害の際に1つサテライトがあるということは組織としては大事なことですね。(社員の安否は)大部分が自己申告です。自己申告がない人は、かなりシリアスだろうと、こちら側からバイクで捜しに行ったら大変なことになっていた。でも、(自己申請しない人は)数の上では少なかったです。
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