兵庫県の内部告発文書を作成した前西播磨県民局長(以下、前県民局長)が7月7日に「死をもって抗議する」との言葉を残し、自死したことが報じられました。なぜ、このような事態に至ってしまったのでしょうか。1つに公益通報者保護法の理解不足がありました。それ以上に本質的な原因は、問題発生時のリーダーの初動にあったと言えます。
初動にやるべきこと
問題発生時にやるべきことは、事実の確認であることは基本中の基本。しかしながら、ありがちな対応は「誰がやったのか」と犯人捜しに奔走し、自分を守るために周囲を処分することです。兵庫県はまさに典型的な失敗をしてしまいました。
時系列で振り返ります。事の発端は内部告発文書でした。3月12日、報道機関、県警、県議に匿名で告発文が配布されました。書かれた内容は、7項目。ニュースサイト「HUNTER」の4月2日に掲載された、前県民局長が作成したとされる告発文書をもとに、内容を整理すると以下の通りになります。
①ひょうご震災記念21世紀研究機構の理事長のもとに副知事が訪問し、副理事長2名の解任を通告する、いやがらせ行為。なお、理事長は副知事の訪問翌日に死亡。
②2021年の知事選で選挙期間以前から、県職員4人が知人などに現知事への投票を依頼。
③2024年2月、産業労働部長を伴い商工会議所に出向き、次回の知事選での投票を依頼。
④知事宅で山積みになっているロードバイク、ゴルフセット、スポーツウエア、コーヒーメーカーといった贈答品。
⑤政治資金パーティー券を商工会議所に大量購入させている。
⑥阪神・オリックス優勝パレードで寄付が集まらず、県補助金を増額し、募金としてキックバック。
⑦知事のパワハラ(夜間、休日指示、激昂など)。
内容が全く事実無根であれば、怪文書になってしまいますが、果たしてどうなのでしょうか。その後の知事の会見や各種報道から現時点までをまとめると、①について知事は死亡との関連は科学的根拠がない誹謗中傷だとコメントしているものの、副知事は理事長を訪問したことは認めています。
②は否定。③は予算説明だったとして否定。④について産業労働部長はコーヒーメーカー受領を認めて訓告処分(神戸新聞 2024年7月17日)。⑤について知事は「不当な圧力をかけていない。副知事に一任している」とし、副知事は「特別職だから問題ない行動」と回答。
⑥は担当総務課長がうつ病となり、のち2024年4月20日に自殺(日刊ゲンダイ 7月12日)。⑦は「社会通念上の範囲」と知事が回答。つまり、全くの嘘とは言えない内容でした。
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