BCMを経営に融合するためにISOなどの第三者認証は有効に使えるか(イメージ:写真AC)

BCPの計画と現実とのギャップを、多くの企業に共通の「あるある」として紹介、食い違いの原因と対処を考える本連載。第2章は「BCPの実効性、事業継続マネジメント、発生コスト」に焦点をあてていますが、前回に続いて事業継続マネジメントに潜む「あるある」を取り上げます。BCMを経営プロセスに乗せるにはどうすればいい? ISOをはじめとする第三者認証は有効に使える? 今回はそんな疑問にお答えします。

第2章
BCPの実効性、事業継続マネジメント、発生コストの「あるある」

(6)事業継続マネジメント

・「ISOの二の舞だ」(中堅・製造業・経営)

この事例はコンサルティングのお客様の事例ではなく、ある会でたまたま隣に座っていた方と事業継続の話題になった時のことです。

隣席の方「ぶっちゃけBCPなんてやりたくないですよ」

「すごい本音ですね。何でですか?」

隣席の方「どうせISOの二の舞です。手間ばかりかかって」

「何もメリットがないわけじゃないですよね」

隣席の方「設備投資の補助金をもらうためにやっているようなものです」

「またまたすごい本音ですね」

最後の補助金の部分はさておき、ISOに恨みでもあるのかという勢いで嫌悪していました。どうしてそんなにISOを恨んでいるのか、興味を持ったので聞いてみたところ、認証維持が目的化してしまい、ISOを経営や部門運営、顧客満足や品質向上のための道具として役立たせることができず、誰のためにもならない運用をさせられている、ということでした。

隣席の方「入札要件や顧客要求がなければ、捨ててしまいたい」

ごもっともです。捨ててしまいたいISOはどんなISOなのかイメージしながら、面白半分に作文してみます。
                                     
会社で本来持っている経営目標や方針とは関係のない、取ってつけたような目標をつくり、目標達成に向けて一丸となって取り組んでいるように見える計画をつくり、つじつま合わせやピント外れの実績に片目をつぶり、教育の有効性を作文し、使いまわしのチェックリストで儀式化した内部監査を行い、外部の審査員に見せる用にいくつか不適合や観察事項を探し出し、それっぽい是正を行っておく。

是正のために新たな記録をとり始めて現場の負荷がまた上がる。外部の審査員が来る前には捺印をもらうために社内中を駆け回り、審査員に何か指摘されれば多大な工数をかけて文書化し、また新たな記録を取ったり、既存の記録のルールを変えてみたり、書類の流れを分岐させたり承認者を増やしてみたりし、マネジメントレビューでは意図的に「よくやっているから全社一丸となって例年通り引き続きがんばりたまえ」というような指示と言えないような指示をもらう。

やっている感のためのISO(イメージ:写真AC)

そもそもトップはISOに関心がないので読みもせず、言われた場所に印鑑を押すだけ。こんなことを「君に任せたから」と押し付けられて毎年繰り返す。やらされISO。燃えるような熱意をもって入った会社であっても、液体窒素の海に落とした一切れの魚の切り身のように、熱意は一瞬で凍りついてしまう。
                                      

こんなISOなら、確かに捨ててしまいたくなります。