□事例:悪質クレームでうつ病

Aさんは、某地方都市にあるスーパーマーケットBでレジ打ちを担当している40代のパート社員です。スーパーマーケットBはその地方では誰もが知っている食品スーパーであり、地域の台所の役割を担っています。

ある日の夜、Bでは、総菜コーナーに陳列していた「天ぷらの盛り合わせ」パックの消費期限が迫ってきたこともあり、通常1パック400円のところを、半額の200円に値下げをしました。パックの値札にも「半額200円」としっかり表示をした上での販売でしたが、そのパックを手に取りAさんの担当するレジに来た50代と見られる男性が、レジで会計をする際、「200円の半額なのだから、この商品は100円のはずだ」と言い出しました。Aさんは、通常400円商品が半額の200円になっているという説明を行いましたが、男性は納得せず、自分の主張を繰り返しました。また、男性は「表示の仕方が悪い」「この店は客から不当に高い金額を取ろうとしている」と言い出しました。Aさんは表示に誤解を与える点は謝りましたが、100円にはならないことを分かってもらおうと説明を続けました。すると「お前はばかなのか?」「よく恥ずかしくもなくレジ係をやっていられるな」と、Aさんへの人格攻撃が始まりました。さらには「お客は神様だろう」「俺たちのおかげで給料がもらえてるくせに」と言ったり、「この店は全く客を馬鹿にしている。このことはSNSで拡散する」などとまで言い始めました。騒ぎを聞きつけた店長が駆け付け、男性の説得に努めましたが、男性はその後も同じような発言を延々と繰り返し、結局2時間もレジの前に居座り続けました。

これ以上は営業妨害に当たると思った店長が「まだ居られるのであれば、警察に通報します」といったことで男性は帰っていきましたが、その帰り際にも「今日のことはネットに書きこむから」とのセリフを吐いていきました。

Aさんは、男性から浴びせられたさまざまな言葉がトラウマになり、仕事を続けることが苦痛となってBを退職しました。そればかりか、退職後もBの看板を見ると気分が悪くなるようになり、天ぷらも食べられなくなってしまいました。病院へ行ったらAさんは「うつ病」と診断されました。