■RTOはビジネス・インパクト分析から導く

前掲の「(1)中核事業に関わる取引先やサプライチェーンの要請」について、BCP策定運用指針の続きを解説しよう。中核事業はBCPにおいて最優先で維持・継続しなければならない事業であるから、必然的にどのような利害関係者(顧客や取引先、サプライチェーンを構成する企業など)が関わっているかが見えてくる。当社が被災して製品やサービスの供給が途絶えたとき、いつまで利害関係者たちが製品・サービスの供給再開を待ってくれるだろうか。遅きに失すれば信用を失い、顧客離れが生じて下手をすると廃業に追い込まれる。

そうした最悪の事態に至らないために早めに製品やサービスの供給を再開できるように中核事業の復旧期限(いわば安全弁)を設けておこうという考え方、それがRTOである。これは自社の一存では決められないから、取引先の経営者や幹部従業員へのヒアリングを通して把握・調整するとよいだろう。

次に「(2)あなたの会社の財務状況にもとづく時間」について。災害で事業が停止するということは、売上ゼロ、復旧に要する諸々のお金が湯水のように出ていくということだ。遅かれ早かれ資金の枯渇に直面するのは目に見えているから、自社の資金が耐えられる限界の期間を前もって見積もっておく必要がある。それはいつまでか。

このようにして以上の2点を勘案しながら、目標復旧時間を設定するのである。文字だけで書くとややこしいが、次のように時系列に検討していくと目安となる期限が直感的に見えてくる。

・中核事業が1日、3日、1カ月、3カ月止まると、(1)(2)についてどんな影響が出るか?
・最も深刻な影響が出る前に事業を再開するとしたら、いつの時点が望ましいか?(←これがRTO)

ちなみにこれはビジネス・インパクト分析と呼ばれる方法を簡便にしたもので、基本的な考え方は欧米でも日本でも変わらない。ただし以下で述べる点を除いては。