2019/10/03
知られていない感染病の脅威
再び日本で発生
2018年9月9日、岐阜県の養豚場において、日本では、1992年以来26年ぶりとなる豚コレラの発生が確認されました。原因となった豚コレラウイルスは、国外からの観光客により違法に持ち込まれた非加熱の豚肉に付着しており、そのウイルス汚染非加熱豚肉が廃棄され(おそらく農村部で)、野生のイノシシに食べられ、そのイノシシが感染し、何らかの経緯で養豚場に侵入した可能性が考えられています。ウイルスに感染したイノシシは養豚場内に侵入しても豚舎内に入ることはできず、養豚場内に生息する多数のネズミなどを介して、豚コレラウイルスが豚舎内に持ち込まれたと推定されています。豚コレラの国内での発生地域は拡大しているのですが、発生養豚場から別の養豚場へ直接ウイルスが伝播した事例は起きていません。
分離された豚コレラウイルスの性状は、中国で分離された病原性の低いウイルスに類似することが分かっています。
岐阜県で発生した豚コレラは県を越えて発生が拡大しました。2019年9月末日までに、 岐阜県、愛知県、長野県、滋賀県、大阪府、三重県、福井県、埼玉県(1府7県)の養豚場で43件の発生が確認されています。しかし、ウイルス封じ込めのめどはついていません(図1)。
また、2018年9月13日以降、岐阜県、愛知県、三重県、福井県、長野県、富山県、石川県、滋賀県、埼玉県(9県)において野生のイノシシの豚コレラ罹患が確認されています。すなわち、少なくとも、豚コレラ発生地域内では、人では活動を制御できない野生のイノシシでのウイルス感染が広範に起きており、そのイノシシが豚コレラウイルス感染源になっていると考えられています。なお、豚コレラ未発生の自治体においても野生のイノシシの検査は実施されていますが、現在のところ石川、富山両県以外に陽性事例は確認されていないようです。
知られていない感染病の脅威の他の記事
おすすめ記事
-
能登の二重被災が語る日本の災害脆弱性
2024 年、能登半島は二つの大きな災害に見舞われました。この多重被災から見えてくる脆弱性は、国全体の問題が能登という地域で集約的に顕在化したもの。能登の姿は明日の日本の姿にほかなりません。近い将来必ず起きる大規模災害への教訓として、能登で何が起きたのかを、金沢大学准教授の青木賢人氏に聞きました。
2024/12/22
-
製品供給は継続もたった1つの部品が再開を左右危機に備えたリソースの見直し
2022年3月、素材メーカーのADEKAの福島・相馬工場が震度6強の福島県沖地震で製品の生産が停止した。2009年からBCMに取り組んできた同工場にとって、東日本大震災以来の被害。復旧までの期間を左右したのは、たった1つの部品だ。BCPによる備えで製品の供給は滞りなく続けられたが、新たな課題も明らかになった。
2024/12/20
-
企業には社会的不正を発生させる素地がある
2024年も残すところわずか10日。産業界に最大の衝撃を与えたのはトヨタの認証不正だろう。グループ会社のダイハツや日野自動車での不正発覚に続き、後を追うかたちとなった。明治大学商学部専任講師の會澤綾子氏によれば企業不正には3つの特徴があり、その一つである社会的不正が注目されているという。會澤氏に、なぜ企業不正は止まないのかを聞いた。
2024/12/20
-
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/12/17
-
-
-
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方