③企業に関する都市伝説「商業伝説」
いま1つ企業経営に影響を与える風評としてあげられるのは都市伝説です。企業の都市伝説は「商業伝説」と言います。「マクドナルドのハンバーガーは、ミミズを使っている」「ケンタッキーのフライドチキンは、四つ足の鳥を使っている」など、皆さん聞いたことがあると思います。権威のある大企業のうわさほど広まりやすいと言われています。こういったものが商業伝説です。根も葉もない全く関係ないうわさがよく出てきますが、特に対策を取る必要もないものです。

④風評被害
これまで説明したように本来、風評被害とよぶべきでないものまで含め、あらゆる分野で「風評被害」という言葉が使われています。では、風評被害とはどういうものなのでしょうか。まず、風評被害のメカニズムを風評被害の元来の意味から説明したいと思います。

安全にかかわる社会問題や事件、事故、環境汚染、災害、不況が報道されて、本来、安全とされる食品や商品、土地、企業を人々が危険視して消費や観光をやめることによって引き起こされる被害、これが風評被害です。ポイントの1つ目は「安全」です。本当は安全なのに危険だと誤解されて生じる被害です。ですから、環境汚染で危険性のある商品を人々が買わないことを、風評被害とは言いません。これは風評ではなく環境汚染そのものだからです。危ない企業、潰れそうな企業の株を買わない、取引しないというのは、その企業に勤める人にとっては風評かもしれませんが、事実として業績が悪くなっているのならば、風評ではないわけです。

2つ目のポイントは観光、農業、漁業などにダメージを与える「経済的被害」という点です。今では、精神的被害や炎上など色々なことを対象に風評被害という言葉を使いますが、風評被害とは経済的被害を問題としたものでした。日本で発端となったのは広島・長崎の原爆被害に続く「第三の被爆」といわれた1954 年の第五福龍丸の被爆事件です。歴史的に、日本では原子力が関連する事故において風評被害が問題となってきました。

東日本大震災以前は原子力発電所がトラブルを起こしても、大量の放射性物質の漏洩はありませんでした。しかし、ひとたび事故が起こると、みんな怖がって魚や野菜を買わなくなる。皆さんもご承知のように放射性物質は検査で測れます。だからトラブルや事故が発生したとしても「放射性物質は出てない、安全です」とはっきり言うことができます。ただ安全であったとしても――、「風評に過ぎない」ものであっても――、流通が滞ったり、人々が商品を買ってくれなくなれば、経済的被害は発生するのです。これが風評被害です。

実は、風評被害の「風評」は風評に過ぎないという意味でうわさは全く関係ありません。風評被害はうわさと全く違う現象なのです。東日本大震災の福島第一原子力発電所をきっかけに風評被害が問題になっていますが、危険だといううわさ、ネットの書き込みを根絶させても問題は解決しません。震災後の流通構造の変化の問題ですから当然です。それよりもきちんと現状の汚染状況、食品の安全性について理解する人が増え、商品などを購入してもらえるようになり、商品が適性に流通されることが重要です。うわさはあまり関係ありません。