□解説:戦略的リスクマネジメントのポイント

毎年1月にスイスのダボスで「世界経済フォーラム(通称:ダボス会議)」が開催されます。ダボス会議は、全世界から政治やビジネスのリーダーが集結し、世界・地域・産業の問題を提起し、世界情勢の改善に取り組むことを目的にしていますが、ここで2005年からリスクの専門家たちが「その年から10年間に顕在化が懸念されるリスク」をまとめたグローバルリスク報告書が提出されるようになりました。Bさんが感じたように、過去に報告されたリスクは、これまで高い確率で顕在化していると言わざるを得ない状況にあり、毎年発表される報告書は、日本企業でも重要な情報として認識する必要があります。

不確実性のリスクは、企業の経営戦略、中長期計画や新規プロジェクト、企業の買収、市場開拓など、企業の未来に関係するリスクが対象となります。「戦略的リスクマネジメント」とも言われ、その概念は「企業の経営判断にリスクマネジメントをフルに活用し、企業価値を創造する」というものです。そのためには、情報収集およびその情報を基に世界情勢や社会環境の変化を読み、常に対応準備を行う必要があるのです。

労働者の低賃金だけを目的に海外に工場を建設し、製造部門を全て海外に移転。それにより長年培った技術力やノウハウが流出してしまい、海外企業との価格競争に巻き込まれた結果、世界の市場を奪われてしまった某製造業の例など、これまでの日本企業では戦略的リスクマネジメントを活用しなかったために多大な損失に発展したケースが後を絶ちませんでした。