2014/09/20
C+Bousai vol1
地区防災計画学会が設立記念シンポジウム

私は都市計画が専門で、どちらかというと空間づくりを専門とする立場だが、地区防災計画のガイドラインを作るとき、全国の先進事例をいろいろヒアリングさせてもらって感じたことは、祭りの賑やかな場所や、小学校の運動会に地域の方がたくさん集まるような地区は、防災活動も集まりが良く熱心であるということ。地域の団結力があるところは、防災活動も活発に行える土壌があるのだろう。
もう1つ、地域の将来像を自分たちで議論できる環境が整っている地区は、いざ被災しても、復興への議論が早いということ。地区防災計画は事前復興の入り口になるということを期待してもいいのではないか。こうした活動から将来の都市空間をどう考えることができるかということについても期待をしている。
都市計画の世界では、建築協定や景観協定など、住民自らが地域の中で建物の建て方などをルール化する制度がある。当初は自分たちのルールを市長に認知してもらうという程度の話だったが、法的にも担保しようという動きになってきて、役所と連動するオフィシャルな位置づけを持つようになったことは、住民にも、行政にもメリットがあることだと思っている。あとは、どういう単位でこの計画をつくるのかが課題だ。特に初期の頃は、いろいろなあり方、可能性を発掘して発信していければいいと考えている。

2014年度版の防災白書に、「共助による地域防災力の強化」と題して特集が組まれ、地区防災計画制度のことが大きく取り上げられた。この中で、内閣府が行った防災活動に対する意識調査の結果がまとめられているが、堀口先生がおっしゃったように、お祭りまどのさまざまな地域活動に参加されている地区ほど、防災活動に積極的に取り組まれていることが明らかになった。
さて、小出先生からは、地区防災計画をなぜ格上げしなければいけないのかという質問が出されたが、これは大変重要な論点だと思う。阪神・淡路大震災、東日本大震災と2つの大きな災害を経験して、地域コミュニティの防災に対する関心が高まっていることははっきりしていると思っている。ところが、いざ見てみると、地域では自主防災組織が活躍していても、実際に活動をしている人は役員などに限られているケースが多い。役員が変わってしまったら活動が止まってしまったり、思うようにいかなくなったという話も聞く。こうした中で町内会の活動をもっと重層化していくための手段として地区防災計画制度を考えている。活動が重層化していけば、行政との関係も密接になってくる。自分たちで行う限界も見えてくる。その中で、自分たちの計画を市町村の計画と連携させていくことが必要になった時、この制度が、1つのツールになると期待している。したがって、行政がトップダウンで計画をつくるための制度ではなく、ボトムアップで実際に防災活動に取り組んでいる人、取り組みたいと思っている人に、活用していただくことをねらいとしている。
地縁を超えたつながりはまさにご指摘の通りで、ICTなどの活用により、外部とのつながりなどを強化していくことも必要だと思う。一方で、外部のボランティアなどの援助を受け入れやすくするためには、受援体制を整えておく必要があり、そのためにも地区防災計画により地域コミュニティの関係を良くしておくことが望まれる。
今後初動以外の、予防や復旧・復興も重視していく必要があるというご指摘もその通りで、各段階で、いろいろな活用方法があると思う。

小出先生の3つのポイントに対して私見を述べさせてもらうと、地区防災計画として制度化するということは権利と責任を与えることだと思っている。単に自由にやりなさいというのではなく、行政としてもそれをサポートするし、実現していくために責任も持つということ。2番目の地縁という概念が随分変わってきていることに関しては、いわゆる住んでいる人たちだけのコミュニティという概念は超えていかないといけない。住んでいる人と事業所、NPO、ボランティア、行政といろんな人たちが集まって、1つの新しい共同体的概念がこれからは必要になってくる。3番目の応急対応だけが重視されている点は、むしろ事前準備や復旧・復興まで広く視野を広げ、そのことがソーシャルキャピタルという幅広い概念の基礎力になってくると考えている。
C+Bousai vol1の他の記事
おすすめ記事
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/01
-
-
-
-
-
全社員が「リスクオーナー」リーダーに実践教育
エイブルホールディングス(東京都港区、平田竜史代表取締役社長)は、組織的なリスクマネジメント文化を育むために、土台となる組織風土の構築を進める。全役職員をリスクオーナーに位置づけてリスクマネジメントの自覚を高め、多彩な研修で役職に合致したレベルアップを目指す。
2025/03/18
-
ソリューションを提示しても経営には響かない
企業を取り巻くデジタルリスクはますます多様化。サイバー攻撃や内部からの情報漏えいのような従来型リスクが進展の様相を見せる一方で、生成 AI のような最新テクノロジーの登場や、国際政治の再編による世界的なパワーバランスの変動への対応が求められている。2025 年のデジタルリスク管理における重要ポイントはどこか。ガートナージャパンでセキュリティーとプライバシー領域の調査、分析を担当する礒田優一氏に聞いた。
2025/03/17
-
-
-
なぜ下請法の勧告が急増しているのか?公取委が注視する金型の無料保管と下請代金の減額
2024年度は下請法の勧告件数が17件と、直近10年で最多を昨年に続き更新している。急増しているのが金型の保管に関する勧告だ。大手ポンプメーカーの荏原製作所、自動車メーカーのトヨタや日産の子会社などへの勧告が相次いだ。また、家電量販店のビックカメラは支払代金の不当な減額で、出版ではKADOKAWAが買いたたきで勧告を受けた。なぜ、下請法による勧告が増えているのか。独占禁止法と下請法に詳しい日比谷総合法律事務所の多田敏明弁護士に聞いた。
2025/03/14
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方