□対策:あらかじめ発生を想定し準備しておく

繰り返しになりますが、第三者からの犯罪行為によるリスクは、あらかじめ発生することを想定し、その対応を事前に準備しておくことが重要です。事件が起きた際、担当者や経営トップが「そのようなことは起こるはずがない」などと考え、事実関係の把握を怠り無責任な発言をすることや、警察沙汰を恐れるあまり情報開示や対応のタイミングを誤ると、発生した事件そのものではなく、企業の対応自体が非難の的になってしまいます。そうなると長年かけて築いた信頼も一瞬のうちに崩壊すると同時に、昨今ではその不名誉なレッテルがインターネット、SNS上に長期間残り続け、長きにわたって企業イメージを損なうことにつながってしまいます。

具体的には、現場の担当者から経営トップへの情報伝達方法や伝達基準といった「エスカレーションルート」の決定と、社内での情報共有手段を決めておく必要があります。

また、原因の究明や現状把握などを誰が指令し、誰がやるのか、といった役割分担も決めておかなければなりません。同時に、その担当者不在の際の代行者も決定しておくべきです。

さらに、危機に対応するための組織としての「対応方針」も決定も必要になりますが、その際には、どんな二次的被害が考えられるのか?を想定して決定する必要があります。どのような二次的被害が起き得るかを想定するためには、過去に起きた他社事例の情報収集は欠かせません。そして「これがうちの会社で起こったら…」という自社への当てはめを行っておく必要もあります。

危機対応に当たっての組織としての「公式見解」も忘れないようにしましょう。公式見解はそれを外部のステークホルダー(マスコミを含む)に公表するときは「プレスリリース」になるものですが、同時に全社員にも通達しておきます。事件発生直後から、社内では正誤の情報が錯綜(さくそう)することが予想されます。また、マスコミの対応窓口を社内で一元化したとしても、事件の当事者となった際には、社員一人一人が会社の代表として世間から見られてしまうことも多いため、社員への正確な情報提供は欠かせないものとなります。社員への説明はできる限りマスコミ発表に先立ち最優先で行いましょう。社員へはプレスリリースの内容の他、以下も通達します。

① マスコミ対応窓口の連絡先を伝え、取材を受けた際にはそちらに問い合わせてほしい旨を通達する

② マスコミ以外の外部の人(家族や友人など)からの質問に対して、何をどこまで話してよいかについて

公式見解を社員に通達することで、●社内の混乱、社員の動揺を抑える、●あらぬ誤報を生じさせない、●会社の危機管理の姿勢を疑われない、といった効果があります。

今回のリスク:主に経営層・管理職が注意すべきハザードリスク

 
 

(了)