連携できずに庁舎の機能不能
最後の課題として連携を挙げておきたい。 

市の庁舎が浸水した理由は、そもそも浸水が予想される場所に建設されたことが問題なことは先に書いた通りだが、市庁舎がある水海道地域を浸水させた水は、鬼怒川の水ではなく、鬼怒川と小貝川の間を流れる八間堀川の水だったという指摘がある。 

八間堀川は県の管理河川で、下妻市から常総市に流れる。常総市の南部で分岐して、それぞれ鬼怒川、小貝川と合流する。分岐点には小貝川への流れをせき止める水門があるが、10日は開いたままで両方に水が流れ込んでいた。しかし、鬼怒川と小貝川の水位が上がり、八間堀川への逆流を防ぐため、それぞれの合流点にある水門は閉じられた。八間堀川の水量を減らすため、ポンプで鬼怒川に排水していたが、鬼怒川が満杯状態になり、午後1時に排水も中断された。これらの対応により、逆流や鬼怒川のさらなる決壊は防げたかもしれないが、八間堀川は出口をふさがれた形になり、水の行き場がなくなり水海道市内に流れ出たのだという。鬼怒川との合流点にある排水ポンプ場が約9時間半にわたり止められたことは発表資料から確認できる。 

いずれにしても、浸水により、市庁舎は1階が水没。受電施設や非常用発電機は1階にあり、すべての電気、コンピュータ類が使えなくなった。さらにNTTの基地局も水没し、携帯電話も通じにくい状況に陥った。 

各施設の管理者は、鬼怒川側の水門などが国土交通省、小貝川側の水門が常総市、分岐点の水門が下妻市に事務所がある江連八間土地改良区となっている。水門を止めるオペレーションが本当に必要だったのなら、このことはあらかじめタイムライン上で各組織が共有しておくべきだったろう。 

常総市には防災や危機管理の専門知識を持つ防災専門監がいない。それならば、なおさらのこと平時からの国や県との連携が必要になる。市では、第三者委員会を設置し、今回の豪雨への対応を検証する予定だが、常総市だけの問題として終わらせるのではなく、全国の自治体が今回の教訓を生かして防災に取り組んでいく必要があろう。