2016/08/28
スーパー豪雨にどう備える?
2015年10月20日の「朝日新聞」朝刊に掲載された2つの記事から始めたい。
1つの見出しは、「皇后さま今日81歳」である。記事の中で皇后さまは水害で被災した茨城県常総市を見舞ったことについて「『水流により大きく土地をえぐられた川沿いの地区の状況』に驚いたといい、『道々目にした土砂で埋まった田畑、とりわけ実りの後に水漬いた稲穂は傷まく農家の人々の落胆はいかばかりかと察します』と思いやった」。
もう1つの見出しは「鬼怒川堤防かさ上げ、最大1.4m、整備局方針」である。記事の中で「決壊は川の水が堤防からあふれる『越水』と、その水が陸側の堤防ののり面下部を削り続けたことが主な原因で、それに水が堤防にしみ込んで崩す『浸透』もあった結果とみられている。このため、堤防の高さを約4mから5.4mにし、幅も川側に1.5mほど広げる」。
編集部注:「リスク対策.com」本誌2014年9月25日号(Vol.45)掲載の連載を、Web記事として再掲したものです。(2016年8月30日)

大豪雨と堤防決壊
今年9月9日、愛知県知多半島に上陸した台風18号は、日本海に進んで温帯低気圧となった。だが、これに向けて南から湿った空気が秋雨前線を刺激し、西日本から北日本にかけて広い範囲で大雨が続き、日本の東に発達した台風17号の影響で、湿った空気が東に抜けられなくなった。積乱雲が帯状に連なる線状降水帯が栃木県と茨城県の上空に停滞し、長い時間集中豪雨をもたらした。記録的豪雨が大地を叩き続け河川の氾濫が心配された。気象庁は「特別警報」を発し、最大限の警戒を呼びかけた。大洪水は関東・東北の両地方に集中した(「関東・東北豪雨」と名付けられた)。
9月10日12時50分、ついに悪夢が現実のものになった。常総市三坂町地先の鬼怒川左岸(東側)堤防が決壊した。鬼怒川の利根川合流点から21km上流の地点である。堤防を切った濁流は、東に流れ下って低地を求めながら常総市を中心に1万戸以上が床上・床下浸水し、田畑は泥の海に没した。多数の住民が孤立し救いを求めた。
これより先、決壊現場から約4km半上流の若宮戸地先では激流が溢水し地域に流れ込んだ。この地は大型の太陽光パネルを設置するため川に沿って発達した小高い「自然堤防」を掘り崩してしまっていた。「自然堤防」はその昔から洪水防御に役立ってきた。地元住民は洪水に対して無防備になるとして従来の自然堤防に戻すよう強く求めてきた。が、要求が実現しない間に心配が現実のものとなった(溢水は洪水の無堤地での越流。越水は洪水の堤防越流)。
スーパー豪雨にどう備える?の他の記事
- 特別寄稿2 リスクアセスメントの偏重
- 特別寄稿1 検証:鬼怒川の大決壊
- 風速80mの台風が日本を襲う!
- 「地下」への雨水流入を遮断 東京地下鉄株式会社
- 洪水の脅威を知る企業の対策 株式会社コロナ
おすすめ記事
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
-
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
-
-
生コン・アスファルト工場の早期再稼働を支援
能登半島地震では、初動や支援における道路の重要性が再認識されました。寸断箇所の啓開にあたる建設業者の尽力はもちろんですが、その後の応急復旧には補修資材が欠かせません。大手プラントメーカーの日工は2025年度、取引先の生コン・アスファルト工場が資材供給を継続するための支援強化に乗り出します。
2025/04/14
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方