もしも大災害で社員が被災したら?
-
「災害復興法学」のすすめ
「防災・減災を自分ごと」にしてほしいという願いからはじまった本連載も、今回が最終回となりました。被災者を支援する法律はあるのに、知られていない、利用しにくいなどの理由から十分な支援ができないケースは多々あります。ならば既存の法律や制度の改善が必要で、連載のベースとなった「災害復興法学」はそのための学問です。防災や復興においても「法律」「政策」が重要なファクターになることに興味を持っていただけたら本望です。
2020/03/11
-
巨大災害時の共通のリーガル・ニーズを知っておこう
熊本地震は、地震や土砂災害で直接亡くなった方が50名であるのに対し、災害後に過酷な避難生活などが影響で亡くなった「災害関連死」が200名以上に及んでいます。原因のひとつは、東日本大震災における実績や教訓が熊本地震の現場に引き継がれなったこと。たとえば、東日本大震災における避難所環境改善の実績が災害救助制度に反映されなかったことで、自治体の備蓄や防災の知恵につながらなかったことは、残念でなりません。
2020/02/19
-
「支援制度があること」の周知自体が重要な支援
2011年3月、東日本大震災が発生した当初、弁護士もまた現場の被災者の声を聞き、少しでも役立つ情報を提供しようと必死になっていました。私は、この膨大な被災者の声を「視覚化」して、記録に残し、広く政策提言に活用すべきではないかと考えました。ひとりの弁護士として日弁連にかけあい、2011年4月から日弁連の災害対策本部室長として相談事例の分析を担うことになりました。
2020/02/12
-
一時休業でも雇用保険の「失業給付」が使える場合がある
大規模な自然災害により事業所が休止や廃止になった場合、会社としては、従業員の退職(解雇)を検討せざるを得ない場合もあるかもしれません。従業員が失職すれば、雇用保険の被保険者(従業員)として、雇用保険の基本手当(失業給付)の受給ができる場合もあります。しかし従業員を失職させてしまうことは、極力避けたいものです。会社の事業継続マネジメント(BCM)の観点からしても、従業員を繋ぎ止めておくことは、事業再開を迅速に進める上でも重要です。
2020/01/22
-
仮設住宅は申込期限と入居要件を確認して
災害救助法が適用されると、住宅が全壊、全焼、流出などした場合で、自らの資力では住宅を得ることができない世帯に対し「応急仮設住宅」が提供されます。応急仮設住宅には「建設型応急住宅」と「賃貸型応急住宅」があります。
2020/01/08
-
諦めないで「リバースモーゲージ」を検討しよう
住まいの再建や修繕のために、新しい借り入れをしなければならない場合も多いと思います。金融機関は利息の優遇や親子ローンなどの商品を用意していますが、年齢や収入により利用ができないこともあります。そもそも、新しい借り入れは人生設計においても大きな負担となりますので、慎重に慎重を期して検討しなければなりません。筆者自身も弁護士でありファイナンシャルプランナー(AFP)でもありますので、無理な計画の危険性はよく知っているつもりです。だからこそ、そもそも被災後に借金を背負うのが良いのかどうかには葛藤があります。
2019/12/11
-
災害救助法の応急修理、利用は見通し持って
比較的大規模で深刻な被害が発生したり、またその恐れがある場合には「災害救助法」の適用を都道府県が決定します。そして災害救助法が適用されている地域では、「住宅の応急修理」という支援を受けることができます。
2019/11/27
-
特定非常災害で行政手続等の期限が延長に
特に大規模な災害があると、本来行うべき各種手続をとることができず、本来の期限が過ぎてしまうことがあります。たとえば、運転免許証の有効期限を過ぎてしまったり、営業許可申請の記載の変更事由の届出義務を履行できなかったりということがおきます。そのような場合に免許失効などの不利益を受けないようにする法律が「特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律」(特定非常災害特別措置法)です。
2019/11/13
-
相続放棄ができる期限に注意を
人が亡くなると「相続」が開始されます。相続人は、原則として、亡くなった方(「被相続人」といいます)のプラスの財産(不動産や現預金など)も、マイナスの財産(借金など)も一切を引き継ぐことになります。これを「単純承認」と呼びます。しかし、被相続人に多額の借金があり、手元に残すべきプラス資産も特段ない場合は、相続人が相続をきかっけに借金だけを背負い込むことになってしまいます。このような不都合を回避するため、相続人が被相続人の権利義務の一切を引き継がない「相続放棄」という仕組みがあります。
2019/10/30
-
避難所で弱者狙う犯罪から従業員を守るには
内閣府男女共同参画局による「男女共同参画の視点からの防災・復興の取組指指針解説・事例集」(2013年)には以下のような報告があります。
2019/10/16
-
便乗・悪徳商法に注意、契約は慎重に
災害後には、災害に便乗した悪質な商法や、契約上のトラブルが発生する傾向にあります。会社としては、従業員の個人のこととはいえ、被災したうえに消費者トラブルを抱えることにならないよう、適切な啓蒙・啓発をしておきたいところです。消費者トラブルの防止は平常時からも必要なことですので、災害対策を契機として、ぜひ学びの場をつくることをお勧めします。
2019/10/02
-
自宅の損壊で他者に被害、ADR活用も
密集した住宅街や市街地では、仮に住まいを失うほどの被害ではなくても、地震や風水害によって、建物の一部、敷地の地盤、がれきなどが、家から近隣へ落下、流入などすることで、損害が発生するということが数多く起きます。
2019/09/25
-
賃貸借契約の紛争、災害ADRによる解決を
被災地でおきる紛争として多い類型のひとつに「賃貸借契約」をめぐる紛争があります。特にアパートやオフィスが多い都市部で非常に件数が多くなり、全相談に占める割合も高くなる傾向にあります。東日本大震災の宮城県や、熊本地震の熊本県では、1年間を通じてもっとも相談の多いカテゴリーとなりました。弁護士の無料法律相談にも、当事者から多数の相談が寄せられました。
2019/09/18
-
義援金は自治体が配分、情報逃さないで
義援金(義捐金)とは、被災者を支援するための寄付金全般のことを指すのが一般的だと思います。一方で、金銭的な支援をする側からすれば、個人や法人から、直接被災者や被災事業者へ支援するケース、被災者支援や復興支援を担う団体へ支援するケース、被災地の都道府県や基礎自治体などの行政機関へ支援するケース、直接または間接的に日本赤十字へ支援するケースなど、様々なパターンがあると思います。
2019/09/11
-
負傷や住居被害時の災害援護資金貸付
大きな災害(都道府県内で災害救助法が適用された市町村が1以上ある災害)により、世帯主が負傷したり、家財や住宅が被害を受けたりした場合には、自治体による「災害援護資金」の貸付制度を使うことができます。「災害弔慰金法」がその根拠です。
2019/09/04
-
重い障害を負った場合の災害障害見舞金制度
災害障害見舞金とは、一定規模の災害(暴風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、地震、津波その他の異常な自然現象)により、重度の障害を受けた者に対し支払われる見舞金です。災害弔慰金と同じく「災害弔慰金の支給等に関する法律(災害弔慰金法)」が根拠になっています。
2019/08/21
-
災害弔慰金、関連死でも受け取り可能
災害弔慰金法は、「災害により死亡した者の遺族」へ災害弔慰金(250万円または500万円)を支払うとしています。「災害により死亡」とは、災害時における直接死(圧迫死、溺死、焼死等)の場合と、いったん助かったがその後に災害の影響で亡くなる「災害関連死」の場合があります。正確にいえば、災害関連死とは「災害による直接死以外で、災害と死亡との間に相当因果関係が認められる死亡」ということになります。
2019/08/07
-
災害弔慰金、遺族と行方不明者家族に最大500万円
災害弔慰金(さいがいちょういきん)は、一定規模の災害(暴風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、地震、津波その他の異常な自然現象)により亡くなった方や行方不明になった方のご家族に対し支払われる見舞金です。「災害弔慰金の支給等に関する法律」(災害弔慰金法)が根拠になっています。
2019/07/31
-
被災者生活再建支援金、最大200万円の加算支援金も
被災者生活再建支援金(第15回「住まいの全壊等には被災者生活再建支援金を」参照)には、最大100万円の基礎支援金のほかに、住まいの再建方法(再築、購入、賃貸、修繕)に応じて、追加で支払われる「加算支援金」があります。
2019/07/17
-
住まいの全壊等には被災者生活再建支援金を
被災者生活再建支援金とは、一定規模の自然災害が発生した場合で、住宅に一定の被害が出た場合や、その後の再建の方法に応じて支払われる支援金(現金給付)です。阪神・淡路大震災をきっかけに成立した「被災者生活再建支援法」という法律が根拠です。
2019/07/10
-
返済条件変更前に被災ローン減免制度の確認を
自然災害被災者債務整理ガイドライン(東日本大震災では「個人債務者の私的整理に関するガイドライン」)は、一定の条件で既存ローンを減免することができる画期的な制度です。ところが、金融機関によっては、自然災害被災者債務整理ガイドラインの存在を把握していない場合もありえます。金融機関の窓口には「自然災害被災者債務整理ガイドラインを利用したい」と明確に手続きの申し出を行いましょう。
2019/06/26
-
被災ローン減免制度には多くのメリット
自然災害被災者債務整理ガイドラインを利用できた場合のメリットについて説明をします。
2019/06/19
-
破産ではない被災ローン減免制度
災害発生直後から、被災者にとって大きな負担となるのが住宅ローンや事業ローンの支払いです。災害後の出費増や収入減は、ローンの支払負担をより一層重いものとします。特に、自宅建物が損壊した被災者は、担保となる財産も大幅に毀損されてしまっていますので、仮に売却して返済をしようにも、残った土地だけでは住宅ローン残金を支払えない場合もあります。
2019/06/12
-
電気・ガス・水道等公共料金の支払いは
私たちは、毎月の生活費として様々な公共料金を支払っています。電話料金、電気料金、上下水道料金、NHK受信料、ガス料金などは誰でもすぐに思い浮かべることができると思います。大規模災害によって電気、ガス、水道などの公共インフラが破壊されたり、利用できなくなった場合に、毎月の料金の支払いはどうなってしまうのでしょうか。大規模災害の難を逃れたとしても、物資や食料もままらない初期の段階では、公共料金の支払いや契約がどうなってしまうのかまでは、なかなか思い至らないのが正直なところではないでしょうか。
2019/06/05
-
保険会社による保険料の支払猶予も
災害時の保険といえば保険金を受け取れるかどうかに注目しがちですが、実際に保険契約を締結している契約者にとっては、保険料の支払いも大きな関心事です。保険契約を締結したら、契約者は保険会社へ保険料を支払うことが必要となります。
2019/05/22