生前は利子の返済のみで済み、元本は死後に不動産で返済します

住まいの再建や修繕のために、新しい借り入れをしなければならない場合も多いと思います。金融機関は利息の優遇や親子ローンなどの商品を用意していますが、年齢や収入により利用ができないこともあります。そもそも、新しい借り入れは人生設計においても大きな負担となりますので、慎重に慎重を期して検討しなければなりません。筆者自身も弁護士でありファイナンシャルプランナー(AFP)でもありますので、無理な計画の危険性はよく知っているつもりです。だからこそ、そもそも被災後に借金を背負うのが良いのかどうかには葛藤があります。

そのなかでもひとつご紹介できるとすれば、住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)の「災害復興住宅融資(高齢者向け返済特例)」(高齢者向けリバースモーゲージ)の利用の検討です。これは、自宅不動産などを担保にして、金融機関から限度額まで借り入れができる仕組みです。金融機関は契約者が亡くなったときに一括で担保に入れた不動産を売却して資金回収をすることを想定しており、存命中は利息分だけを支払っておけば良いという仕組みです。

たとえば、「高齢で新たな融資も収入増も難しいが、土地は何とか残っているので、壊れた家を修理して暮らしていきたい。子どもたちの家族は別に家があるので今の自宅を相続で残す必要はない」といった声にはぴったりの制度といえるでしょう。

高齢者向けリバースモーゲージは、熊本地震をきっかけに開発された商品で、一定以上の被災をした世帯(災害ごとに異なるようですが、熊本地震では仮設住宅入居要件を満たす世帯となっています)で、申込み時に60歳以上の被災者を対象にした融資です。詳しいことは、住宅金融支援機構や弁護士の窓口に問い合わせて情報収集をしていただきたいと思います。

簡単に言えば、(1)既存の自宅や敷地、新しく再建・購入する自宅等を担保にして融資を受け(2)返済は毎月の利子のみでよく(例えば修繕費用で500万円程度の借入をした場合、毎月の支払いは数千円で済むこともあります)(3)元金返済方法は、申込者が亡くなった時に遺族が一括返済するか、担保を売却して支払うか、存命中に元金も返済するなどから選択します。生前に完済ができなかった場合で、不動産売却額が残債より少なくても不足分について相続人へ請求される恐れがないという大きなメリットがあるのが特徴です。

「リバースモーゲージ」という名称はまだなじみのない方が多いと思います。これは、主に高齢者が、自宅を担保(モーゲージ)にして老後生活費を借り入れることを指します。存命中は借入金の利息分だけを支払えば足ります。また、融資限度額(通常は担保にした不動産を売却すれば十分に返済できる金額に設定されます)の範囲で年金形式で借入金を受け取る「借り増し」もできます。通常は返済して減っていくローンが、「逆(リバース)」に増えていくので「リバースモーゲージ」と呼ばれるのです。

(了)