段ボールなどで簡単に設置できる更衣室もあります

内閣府男女共同参画局による「男女共同参画の視点からの防災・復興の取組指指針解説・事例集」(2013年)には以下のような報告があります。

東日本大震災では、避難所で、知らない人が隣に寝ていて、身体を触られた、更衣室をのぞかれたなどの相談も寄せられており、女性に対する暴力等が懸念されます。そのため、就寝場所や女性専用スペース等を巡回警備したり、防犯ブザーを配布するなどの配慮が必要です。このほか、暴力禁止を謳うポスターの掲示や、自己防衛のためにもなるべく複数で行動するように避難者に対して呼びかけるなどして、配偶者からの暴力、性犯罪等に限らず、性的いやがらせ、セクシュアル・ハラスメントも含めて、女性に対する暴力の注意喚起を進めることが考えられます。

公共施設などを利用した避難所の初期段階では、プライバシー確保が難しい状態に陥ることもあります。また、避難所にパーテーションや段ボールベッドが配備されて、プライバシーが確保された後も、女性や子どもが犯罪に巻き込まれる危険は尽きません。

会社としては、従業員個人の問題とすることなく、家庭が安心・安全となるよう少しでも協力できる点を探し出すことが重要になります。臨時に社宅を用意したり、宿泊施設へ避難させるなどし、生活環境を根本から改善することも十分に検討の余地があります。避難所での生活は、心身ともに過酷になる恐れがあるので、会社としては従業員を守る観点から協力を惜しまないことが大切です。

とはいえ、避難所で生活を送ることがやむを得ない場合も多いと思います。その場合には、早急に避難所環境の改善を求める必要があります。女性特有の観点で言えば、(1)生理用品や下着などの差し入れ支援(2)段ボールなどで簡単に設置できる更衣室設置支援(避難所運営者や自治体との協力が必要です)(3)防犯ブザーの配布、などは、相応の効果があると思われます。もちろん他にできることは多いはずです。

いざ被害に遭ってしまえば、立場の弱い方々は、声を出して外に助けを求めることは非常に困難です。十分な予防措置を講じること、そして社会全体がそのような意識を持てるようにする啓発活動に日頃から取り組まなければなりません。

国連が決議した2030年の「持続可能な開発目標(SDGs)」では「ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る」という項目もあります。会社として避難所環境改善と女性、子どもの保護に力を入れることは、「SDGs」に根差した取り組みとしても評価されるべきだと考えます。

(了)