被災ローン減免制度が利用できるかどうかは専門家に確認を

自然災害被災者債務整理ガイドライン(東日本大震災では「個人債務者の私的整理に関するガイドライン」)は、一定の条件で既存ローンを減免することができる画期的な制度です。ところが、金融機関によっては、自然災害被災者債務整理ガイドラインの存在を把握していない場合もありえます。金融機関の窓口には「自然災害被災者債務整理ガイドラインを利用したい」と明確に手続きの申し出を行いましょう。

制度が利用できるかどうかについて、自分の判断だけであきらめたり、窓口への問い合わせをちゅうちょしたりはしないでください。本当は自然災害被災者債務整理ガイドラインを利用できるはずの被災者に、金融機関の窓口の担当者が「利用できない」と回答してしまうケースも多数報告されているのです。金融機関の誤解による場合もありますので、弁護士の無料相談窓口に現状を説明して、情報を収集することをお勧めします。

金融機関の窓口へローンの支払猶予などの相談に行った際に、自然災害被災者債務整理ガイドラインについて十分にその効用や要件を説明されることなく、単にリスケジュール(返済計画の見直し)だけを説明された場合は、注意が必要です。本来は自然災害被災者債務整理ガイドラインを利用して、債務の一部免除を受けることができる場合なのに、支払い方法のリスケジュールだけで終わってしまう場合もあるからです。

なお、リスケジュール後のローンであっても、自然災害被災者債務整理ガイドラインを利用することができます。しかし、いったん金融機関とリスケジュールの合意をしてしまってから、それを蒸し返して自然災害被災者債務整理ガイドラインを利用しようと思うと、精神的にも大きな負担であり、多くの被災者はあきらめてしまっているのが過去の状況です。そうならないためにも、金融機関との最初の話し合いの段階から、「仮に使えないかもしれないけど、まずは自然災害被災者債務整理ガイドラインが使えるかどうか確認してみる」という発想を、常に持っていることが重要になります。

過去の災害では、財務省、金融庁、日本銀行などから、「金融機関は被災者の相談に応じて支払い猶予措置などをとること」「自然災害債務整理ガイドラインの利用について被災者に周知すること」などを記述した注意喚起の通知(金融上の措置)を、災害直後に発信し公表しています。被災者自身も、このような金融当局側のメッセージを知っておくと、手続きを進める勇気がわいてくるのではないでしょうか。

(了)