BCMの専門家や実務者による非営利団体であるBCI(注1)は、オペレーショナル・レジリエンスに関する調査報告書の2024年版を、2024年5月に発表した。BCIはこれまでオペレーショナル・レジリエンスに関する報告書を2022年、2023年にも発表しており、本連載でもそれぞれ第185回、第220回で紹介させていただいているので、本稿とあわせてご参照いただきたいと思う(注2)。
なお本報告書は下記URLから無償でダウンロードできる。ただしBCI会員でない場合は、BCIのWebサイトにユーザー登録(無料)を行う必要がある(注3)。
https://www.thebci.org/resource/bci-operational-resilience-report-2024.html
(PDF 76ページ/約 10.9 MB)
「オペレーショナル・レジリエンス」という用語そのものに関する説明は、本連載の第185回および第220回の冒頭部分(無料で読める部分)に記載しているので、本稿では記載を省略させていただくが、読者の皆様の中でもオペレーショナル・レジリエンスという用語の意味について、自信を持って説明できる方は少ないのではないかと思う。実を言うと筆者自身も、若干確証がない部分が残っているのが正直なところである。
筆者自身が今ひとつ確証を持てない理由の一つは、オペレーショナル・レジリエンスという用語の定義が未だに定まっていないことである。本連載の第185回ではバーゼル銀行監督委員会(BCBS)による定義を紹介させていただいたが、これと異なる定義が示されている例も見られ、まだ国際的なコンセンサスが固まっていないようにも見える。
実際、事業継続関係者の間でもオペレーショナル・レジリエンスに関する理解や解釈はまちまちであり、そのような状況が具体的に示されているのが図1である。これは、図の左側に記述されているプロセスやツールがオペレーショナル・レジリエンスにおいて重要なもの(key)かどうかを訪ねた結果である。左側の青い部分が「非常に重要」、黄色の部分は「それなりに重要」、右側の黒い部分が「重要でない」をそれぞれ示す。
2023年版でも同様の設問があったが、これらを比較すると一年間でかなり認識が変わったことが伺える。最も目立つ変化は、上位にあるプロセス/ツールに対して「非常に重要」という回答が大幅に増えたことである。最も上にある「重要なビジネス・サービス(IBS)の特定」においても2023年版と比べて10ポイント以上増えているし、3位の「インパクトに対する耐性を脅かす脆弱性に優先順位をつけて対策する」も25ポイントほど増えている。
左側に記述されているプロセス/ツールの数や内容がかなり変わったので単純比較はできないが、おそらくオペレーショナル・レジリエンスに対する理解が進んだり、実際に取り組む人が増えたことによって、実践する際に何が重要かが具体的に分かってきた結果が、このような変化として現れたのではないかと思う。
なお2023年版と比べて順位が入れ替わったものは、4位となっている「インパクトへの耐性を確立する」で、2023年版では2位であった。今回2位となっている「非常に重要なサプライヤーを特定する」は2023年版に無かった項目なので、一年前の時点でどのように認識されていたのかは不明である。
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