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食品業界に携わる皆さまに、突然ですが質問です。

もし明日、あなたの会社の商品から異物が見つかったら、どう対応しますか?
「うちは品質管理を徹底しているから大丈夫」と思っていませんか?

残念ながら、どんなに注意していても、異物混入のリスクをゼロにはできません。近年の異物混入事例を見ると、いかに大手企業であっても、この問題から完全に逃れることは困難です。今回は、大きな話題となった「すき家」の連続異物混入事例を詳細に分析し、過去の事例と比較しながら、危機を乗り越えるための効果的な広報対応について考えてみましょう。

発覚後の対応

2025年1月21日午前8時頃、鳥取県の「すき家 鳥取南吉方店」で、提供された味噌汁にネズミが混入していると客から指摘されました。従業員がその場で目視により混入を確認。すき家の説明によると、味噌汁は具材を事前にお椀に入れておき、注文を受けてから汁を注ぐ方式で、ネズミは具材の入ったお椀に混入していたものの、従業員が気づかずに提供してしまったとのことです。

事態を受け、すき家は迅速に以下の対応を行いました。

・店舗の一時閉店
・徹底的な衛生検査の実施
・ネズミの侵入経路(建物のひび割れなど)への対策
・従業員への衛生管理再教育

その後、保健所の確認を受けた上で2日後に営業を再開しました。また、この事態を受けて全国店舗への「提供前の商品状態の目視確認徹底」指示や、店舗のひび割れなどの確認を四半期ごとに実施する体制も構築したとのことです。

ここまでの対応は、迅速かつ適切だったと考えます。

一方で、この件が公表されたのは事件発生から約2カ月後の3月22日でした。公表の遅れについて、すき家は「本件は当該店舗の建物構造と周辺環境が重なった個店での事例と当社では捉えています。そのため、公表することにより、多くのお客様に対し不安を与えてしまうと考え公表を行いませんでした」と説明しています。

この発表を受け、すき家を運営するゼンショーホールディングスの株価は一時7.1%急落しました。不運なことに、最初の公表からわずか6日後の2025年3月28日、東京都昭島市の「昭島駅南店」で弁当にゴキブリの一部が混入していたとの報告が寄せられました。

2件目の異物混入の発覚を受け、ゼンショーHDは「偶発的ではない」と判断。2025年3月31日午前9時から4月4日午前9時まで、全国の「すき家」店舗を一斉に休業するという前例のない措置に踏み切りました。この一斉休業による損害は約24億円と試算されています。このような大規模な自主休業は、日本の外食チェーン業界では極めて異例の対応でした。