(2)疾病等の蔓延を要因として、国外への退避がなされた事例
①中国からの退避事例

②疾病等の蔓延を原因として退避する際に留意すべき事項
上記SARS蔓延の【事態の推移】を念頭におくと、次のようなことに留意しつつ、計画的に退避行動を取ることが望まれます。

当事国政府の発表の内容は、実際の状況よりも過小に評価されている可能性がある。
(説明)
2003年2月時点で「SARS封じ込めの成功」が公式に発表されましたが、実際にはその後、広東省以外の地域にも感染が拡大しました。また、感染者数および死亡者数も、4月20日まで過小に公表されていました。このように、当事国政府の発表は、社会的な混乱を抑えるために過小に評価されたものとなっている可能性があることに留意する必要があります。

外務省から発表される危険情報は、実際の感染拡大の推移に追いついていない可能性がある。
(説明)
在外公館独自の情報収集と分析には限界があるため、WHO等の国際機関の発表内容も小まめにチェックしておく必要があります。また、自身の居住地域周辺での感染拡大状況などに関しては、情報の真偽に留意する必要はありますが、微信(ウェイシン)や微博(ウェイボー)等のSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)から情報を得ることも望まれます。

また、上記事例(SARS)の場合には特に顕著なものは見られませんでしたが、病原性の高い新型インフルエンザ等が蔓延した場合には、次のような点も考慮しておく必要があります。

□空港の検疫等で発熱が認められた場合、国外への退避が出来なくなる可能性がある。
(説明)
空港の検疫等で発熱が認められた場合には、他地域への感染の拡大を防ぐため、出国が出来なくなる可能性があります。

民間航空機の離発着が大幅に間引きされたり、制限される可能性がある。
(説明)
感染拡大防止のため、蔓延地域とその他の地域の航空機による往来が制限される可能性があります。このため、出国を希望する外国人で空港が混雑する可能性があります。また、日本への出国が難しい場合には、医療水準の高い他国に一時的に出国することも選択肢の一つになります。

空港までの国内の移動が制限される可能性がある。
(説明)
自身の居住地域が蔓延地域内に該当している場合、当該地域内から外部への移動が制限される可能性があります。この場合には、先に蔓延が始まったその他の地域での事例を参考に、自身の居住地域でも外部への移動の制限が行われる可能性があるかどうかを推測し、自らの地域で移動が制限される前の段階で早めに退避を行うことが不可欠となります。

退避移動中に感染する可能性がある。
(説明)
退避は、感染防護策をとったうえで行う必要があります(例:N95マスクを着用する、公共交通機関でなくタクシーや自家用車等を利用する、グループでなく個人で退避する、など)。