意見交換会で合意形成

地区防災計画の策定にあたっては、まず、住民自治協議会や自主防災会の役員、住民自治協議会の構成地区である大町、津野、穂保、赤沼の各区の役員、さらには消防団や、民生児童委員の役員、市の危機管理防災課担当、防災アドバイザーら約30人を集めて「地区防災計画策定委員会」を設置。それまで住民自治協議会らが中心となり策定を進めてきた「避難ルールブック」や「地区防災マップ」の内容を見直すとともに、災害時の協議会としての活動を「長沼地区防災計画」にまとめる作業を開始した。このうち、避難ルールブックと地区防災計画については全戸に配布することを前提に、住民が避難する際に実際に役立つものを作ることを方針として決めた。

委員会では、事務局側がこれまで策定してきた避難ルールブックや地区防災マップの素案に対して、参加者それぞれが感じている不安などについて自由に意見を出し合い、行政の担当者や、防災アドバイザーが参考意見を提示する勉強会を開催。その都度、合意形成を取りながら地区防災計画にまとめ直していく形式とした。

「周辺に高い建物がないのに、どうやって逃げればいいのか」「外が大雨の状態では、特にお年寄りなどを歩いて避難させるのは危険」「いつの時点で対策本部を設置すればいいのか」「避難する際の河川の水位はどのように決定するのか」「対策本部が危険な状況の時はどうすればいいのか」…さまざまな意見に対して、議論をする地道な作業を繰り返した。

例えば、「地区内に高い建物がない」ことについては、完全に安全とは言えないまでも、一定程度の高さのある小学校や、中学校の場所を分かりやすく地図上に示すとともに、民間企業で一時的に避難者を受け入れてくれる企業とは協定を交わし、こうした場所なども地図上に示した。地区内で安全が確保できそうもない場合には、周辺地区の避難場所を市が開設し、そこに避難ができるルールにした。

お年寄りなどの、いわゆる「要配慮者」の支援については、声掛けや避難支援をする担当を決めるとともに、今後は車での搬送も検討していくことにした。また、要配慮者にも、災害時の避難行動に協力してもらえるよう、日頃から積極的にコミュニケーションを図ることを書き加えた。

対策本部の設置基準については、洪水被害が見込まれる場合は、同地区より数㎞下流の「千曲川立ヶ花観測所の水位が7.4mを超過し、さらに水位が上昇すると見込まれる時」または「長沼地区各地で内水氾濫が発生した場合」と設定した。地震の場合は「震度5弱以上の場合に各区の自主防災会が被害状況の収集を行い、支所へ集結して被害状況に応じて設置を決める」とした。

対策本部は、総務班、情報連絡班、避難誘導班、救出救護班、給食給水班、偵察情報班・消火水防班、要支援者班で構成し、それぞれ担当、平常時の役割、災害時の役割も決めた。これまでも自主防災活動が活発だったことから体制づくりは比較的にスムーズに進んだが、住民自治協議会、自主防災会、民生児童委員など、同一地区内でありながら異なる枠組みの活動が重複して行われてきたこともあり、再度、地区防災計画として誰が何をやるのかを同一組織図に書き落とすことで、それぞれが連携して取り組める体制に整理し直した。