2015/07/10
C+Bousai vol3
原発被害を乗り越え未来に繋ぐ
福島県伊達郡桑折町は、江戸時代には奥州街道と羽州街道が交わる要所として、また日本三大鉱山の1つ半田鉱山と養蚕業の中心地としても栄え、南部には阿武隈川が流れる由緒ある土地柄だ。果物の栽培が盛んで、桃の一大産地である福島県の中でも最上級の桃を生産することで知られており、20年間以上、皇室・宮廷に桃を献上する指定を受けて、「献上桃の郷」とも呼ばれている。そのほかにもリンゴや柿などの上質な果物と産地として名が通っていた。
その桑折町にも、東日本大震災は大きな爪痕を残した。幸い犠牲者はなかったものの、負傷者1名、3324棟が被災。古い街並みの象徴であったなまこ壁の土蔵や土壁も大きく崩れ落ちた。
半田地区住民自治協議会副会長の半澤和輝氏は、「一番大変だったのは、物資の不足だった。コンビニエンスストアに行っても品物は何もなく、ガソリンスタンドも毎日長蛇の列だった」と当時を振り返る。
ここに、一冊の本がある。『「こおり新時代」へ あとから来る者のために 東日本大震災・原発事故から四度目の春』と題したこの本は、今年3月に桑折町より発行され、東日本大震災から今日までの同町の復旧と復興の記録を生々しく伝えている力作だ。
同書によると、物資の不足は地震によるものだけではなく、福島第一原発の事故により福島県への物資輸送が敬遠されたことも大きかったという。ガソリン待ちの車は前夜から行列を作り、その列は2キロメートルに及んだ。地震直後から、町内はほぼ全域で停電、断水が発生し、電話も通じなかった。町災害対策本部は地区ごとに避難所を開設。1600人約の住民が避難した。食糧などの備蓄はなく、近くの農家から急きょ米を譲り受け、町内の業者からガス釜を調達し、炊き出しを行ったという。
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