最も議論になったのは住民避難の基準となる千曲川の河川水位。対策本部の設置については、ある程度のゆとりを持って設置する必要があることから、立ヶ花観測所の水位が7.4mになった時点を判断基準にすることで特に大きな議論はなかったが、過去の最高水位は10m強。しかも堤防も強化されている。住民の避難行動については、水位を低く設定すれば、早く避難行動に移れる一方で、逆に、大雨の中で避難させることで危険な状況に曝させてしまうことが懸念される。また、近年の異常気象では、かなりの頻度で大雨が降ることも予想される。こうしたことから、国担当者にも現状の観測体制(観測ポイントなど)や過去の観測水位などの説明を求め、委員会の中で繰り返し議論して方針を決めた。

結果としては、気象台からの大雨・洪水警報の発令があった場合に加え、国が観測している立ヶ花観測所における観測水位の上昇速度を調べ、氾濫危険水位から逆算して2時間を避難判断推移、4時間前を氾濫注意推移として判断を下すことにした。具体的には、立ヶ花観測所の水位が9mを超過し、さらに水位が見込まれるときには避難準備情報を伝達。9m80㎝に到達すると見込まれるときには避難勧告、10m60㎝に到達すると見込まれるときには避難指示を出すことで合意した。

避難勧告や避難指示は、災害対策基本法で、市町村長の権限によって行われるものであることが明記されている。しかし、近年の水害では、避難勧告や指示の遅れが指摘され、国も自治体に対して、空振りを恐れず勧告や指示を出すことを要請している。こうした問題に対して長沼地区は、地区防災計画の策定を通じて住民自らが避難に関する基準について、あらかじめ市と合意することを実現した。市が判断を下しやすくなることで、その分、災害対応がスムーズになることが期待される。

地区防災マップについては、避難所と避難場所の違いがマークでも区別しやすく工夫したほか、「一時避難場所」など専門的な用語をなるべくさけ、住民目線で分かりやすい内容とした。