さらに現在、滋賀銀行や百五銀行(三重県)などBCPを策定することにより金利を優遇する地銀も少なくない。そうした融資を行う際にも、専門家の目で評価される仕組みは生かされるのではないか。企業の事業継続投資は外から見ることはできないため、必ずしも市場で評価されないが、第三者が認証することにより市場でそれを正当に評価できるようになる。見えない努力をした企業が、それをしなかった企業に比べ、取引や金融で有利な条件を得ることができるようになる。吉田氏はその動きが拡大していくことで、さらに事業継続投資を行う企業が増えるといった好循環を期待しているという。

国土強靱化コア市場は2020年に11.8兆円~13.5兆円に

「国土強靱化は公共投資だけではなく、民間市場の持つインパクトも大きい。強靱化が市場を通じて国民経済や市場経済の成長に寄与することを数字で示してみたかった。そうすることで民間企業が規模感や見通しを持てるようになり、国土強靱化市場への積極的な参入や開発投資を促すことができるのではないかと考えた」(吉田氏)

今回、国が出した試算では、国土強靱化市場規模は2013年時点でおよそ12兆円。そのうち、防災と直接関係するコア市場は8兆円、関連市場が4兆円とした。一方で、別途推計した国土強靱化関連の公的支出は、国・地方公共団体を合わせて約12.4兆円となり、偶然だが国土強靱化に関する民間の市場の大きさと公的支出の大きさはほぼ同じ規模となった。

推計は、まず何が「国土強靱化市場なのか」を定義するところから始まったという。もともと「国土強靱化市場」には決まった定義は存在しないのだが、今回の推計に使った定義の根拠は、国土強靱化基本計画だ。計画には12の施策分野と67の推進方針がある。これらの文言を1つひとつ検討し、そこから生まれ出ると考えられる市場を洗い出していった。例えば、計画に以下のような文言が掲載されていたとする。

ここから、「密集市街地の延焼防止」とあれば「密集市街地の解消市場」を、「住宅・建築物・学校の耐震化」とあれば、「非耐震建物の耐震改修市場」などをその分野の市場として抽出する。それらを産業分類上の軸の上で整理し、重なっている部分を排除するなどしたのち、各市場を合算する。抽出した個別の市場推計一覧を次ページに記した。