2016/08/02
誌面情報 vol54
吉田氏は「現在、事業継続計画の策定については国際的な標準規格であるISO22301による認証や、各種ガイドラインによる自己認証制度があるが、どちらも一長一短がある」とする。
ISO22301の認証はスペックが高く専門知識も求められるせいか、現在、取得しているのは日本で200社程度。一方で、さまざまな役所などが公表している各種ガイドラインに基づく自己認証の仕組みもあるが、自己認証のため普及に弾みがかかっていない。その中間の役割として、すそ野の広い事業継続の普及のための第三者認証として今回創設されたのが「国土強靱化貢献団体」の認証制度だ。
認証制度の評価の仕組みとしては、現在、以下が考えられている。
①政府は、企業・団体などの認証のための要件・手続き等を定めるガイドラインを策定する。
②認証を行う主体は外部組織を想定し、同ガイドラインには、併せて、この外部組織が備えなければいけない要件も定める。
③このガイドラインにもとづき、要件を満たす認証組織が、公平・中立な立場から「国土強靱化貢献団体」の認証を行う。
④認証を受けた団体は、認証組織が定める「レジリエンス・マーク(仮称)」を商品、広告等に用いて「国土強靱化貢献団体」であることをPRすることができる。また、その他のインセンティブ措置を受けられる。
取引先にBCP策定を要請・取引条件にしている企業は5.6%(東京商工会議所)
では、企業は認証をどのように活用することができるのだろうか。認証を受けた企業は、認証組織が策定する「レジリエンス・マーク(仮称)」を受けることができ、自社のPRに活用することができる。その他のインセンティブについては現在検討中だ。吉田氏は以下のように話す。
「東京商工会議所が2014年9月に公表した会員企業に対するアンケート結果では、『取引先のBCP策定を取引条件にしている企業』は0.2%、『要請している企業』は5.4%だった。東京商工会議所には約7万7000社が加盟しているそうなので、その5.6%としても約4300社が何らかの形でBCPの策定を取引先に求めていることになる。全国の中小企業を考えればそのような企業はもっと多数になるだろう。現在、取引先のBCPがしっかりしたものかどうかは経営者が自分の目で判断するしかないと思うが、今回の認証制度では専門家の目で事業継続の取組を評価するので、このような際のニーズにこたえられるのではないか」。
誌面情報 vol54の他の記事
- 巻頭インタビュー 政府がBCP認証制度スタート
- 特別寄稿 災害医療に必要な非日常性(下)
- 宗教・文化の違いでトラブルも
- 海外安全対策が変わった!
- 海外安全対策「虎の巻」
おすすめ記事
-
なぜ製品・サービスの根幹に関わる不正が相次ぐのか?
企業不正が後を絶たない。特に自動車業界が目立つ。燃費や排ガス検査に関連する不正は、2016年以降だけでも三菱自動車とスズキ、SUBARU、日産、マツダで発覚。2023年のダイハツに続き、今年の6月からのトヨタ、マツダ、ホンダ、スズキの認証不正が明らかになった。なぜ、企業は不正を犯すのか。経営学が専門の立命館大学准教授の中原翔氏に聞いた。
2024/11/20
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/11/19
-
ランサム攻撃訓練の高度化でBCPを磨き上げる
大手生命保険会社の明治安田生命保険は、全社的サイバー訓練を強化・定期実施しています。ランサムウェア攻撃で引き起こされるシチュエーションを想定して課題を洗い出し、継続的な改善を行ってセキュリティー対策とBCPをブラッシュアップ。システムとネットワークが止まっても重要業務を継続できる態勢と仕組みの構築を目指します。
2024/11/17
-
-
セキュリティーを労働安全のごとく組織に根付かせる
エネルギープラント建設の日揮グループは、サイバーセキュリティーを組織文化に根付かせようと取り組んでいます。持ち株会社の日揮ホールディングスがITの運用ルールやセキュリティー活動を統括し、グループ全体にガバナンスを効かせる体制。守るべき情報と共有すべき情報が重なる建設業の特性を念頭に置き、人の意識に焦点をあてた対策を推し進めます。
2024/11/08
-
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2024/11/05
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方