重要なデータの復旧に確信を持てないのはなぜか
Arcserve / World Backup Day Survey Results
合同会社 Office SRC/
代表
田代 邦幸
田代 邦幸
自動車メーカー、半導体製造装置メーカー勤務を経て、2005年より複数のコンサルティングファームにて、事業継続マネジメント(BCM)や災害対策などに関するコンサルティングに従事した後、独立して2020年に合同会社Office SRCを設立。引き続き同分野のコンサルティングに従事する傍ら、The Business Continuity Institute(BCI)日本支部事務局としての活動などを通して、BCMの普及啓発にも積極的に取り組んでいる。一般社団法人レジリエンス協会 組織レジリエンス研究会座長。BCI Approved Instructor。JQA 認定 ISO/IEC27001 審査員。著書『困難な時代でも企業を存続させる!! 「事業継続マネジメント」実践ガイド』(セルバ出版)
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今回は、データ保護に関するソリューションプロバイダーである Arcserve 社(注1)による調査結果を紹介する。同社が発表した「World Backup Day Survey Results」は南北アメリカ、欧州、および日本において、販売代理店や(恐らく顧客側の)意思決定者(注2)600人を対象として調査を行った結果がまとめられたものである。
同社が強調している最大の問題意識は、上図に示されているとおり、回答者が所属する企業のデータの 79% はビジネスにとって非常に重要なデータ(注3)だと位置づけられているにもかかわらず、システム障害や災害(注4)が発生した際のデータの復旧に十分確信を持っているのは 15%未満であるという、データ保護の必要性と現実との間のギャップである。
また販売代理店の半数以上は、彼らの顧客が災害復旧計画(disaster recovery plan)を持っておらず、また災害復旧計画を持っている顧客であっても、その半数以上は災害復旧計画のテストの実施回数が年1回未満であるというデータが示されている。データを復旧するための計画が無かったり、あったとしても十分テストされていないような状況であれば、前述の通りデータの復旧に確信を持てないのは当然であろう。
あくまでも筆者の主観であるが、データ保護のためのソリューションが多様化し、昔(注5)に比べればより安価に提供されるようになってきた割には、実際の対策状況はなかなか進んでいないという印象である。もちろん一方では利用されるデータの量が急激に増大し、ITに対するビジネスの依存度が非常に高くなるなど、データ保護のための対策をより困難にする要因も増えたと思われ、そのような様々な背景が重なった結果が前述のようなデータに現れているのであろう。
実は今回紹介している調査結果は PDF1ページにまとめられている。「ナナメ読み」と言いながら上記で既に内容の3分の2程度を説明してしまった(注6)。残りはぜひ原文にアクセスしてお読みいただきたいと思う。セールスプロモーションに使われることを想定してこのようにシンプルにまとめられているものと思われるが、このようにシンプルで分かりやすく、しかも問題提起がしっかり伝わるようなデータのまとめ方は筆者も見習いたい。
■ 報告書本文の入手先(PDF 1 ページ/約0.1MB)
https://arcserve.com/data-protection-resources/world-backup-day-survey-results/
注1)約20年前(筆者が IT 関連の仕事をしていた頃)の時点では、Arcserve 社はデータバックアップ/リストア用ソフトウェアメーカーであったが、現在はソフトウェアの提供だけでなく、クラウドサービスを活用したバックアップソリューションなど、データ保護や IT の災害復旧(IT disaster recovery)に関する様々なサービスを提供している。
注2)原文では「channel partners and IT decision-makers」と表記されている。
注3) 原文では「mission or business-critical」と表記されており、厳密に言うと「重要な」というよりは「ビジネスに欠かせない」もしくは「使用できなくなったら致命的な」データという意味合いである。
注4)原文では「disaster event」と表記されているが、もちろん自然災害に限定せず停電などデータを利用できなくなるような事態全般が含まれるであろう。
注5)筆者が IT 関連の仕事をしていた約20年前。
注6)これ以上書くと「ナナメ読み」にならないので今回の記事は非常に短くなった。
(了)
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