関連する法制度の創設・改定が相次いで行われた今年はまさに「福祉防災元年」(写真:写真AC)

福祉防災元年

2020(令和2)年7月豪雨災害において、熊本県球磨村の高齢者施設「千寿園」で14名の高齢者が犠牲になったことを機に、昨年10月、国土交通省と厚生労働省が「高齢者福祉施設の避難確保に関する検討会」を設置し、3月末に最終報告書が出された。

厚生労働省は、2021(令和3)年度介護報酬改定及び障害福祉サービス等報酬改定における改定事項で、感染や災害対応力の強化を重点とし、3年以内にBCP策定を義務付けるなどの省令改正を行った。

4月28日には、避難勧告と避難指示(緊急)を「避難指示」に一本化し、避難行動要支援者の個別避難計画作成を市区町村の努力義務とする災害対策基本法(内閣府)が参院本会議で可決、成立した。同日、浸水被害の危険がある地区の開発規制や避難対策を柱とした流域治水関連法(国土交通省)も成立している。

このような福祉施設の防災対策に関する各省庁の取り組みにより、2021(令和3)年は「福祉防災元年」と言われるに違いない。

厚生労働省と国土交通省の2021年度の取組みについては、3月18日の検討会で参考資料3として示されている。重要な対策が示されているので、法案成立を機に紹介したい。
https://www.mhlw.go.jp/content/sankousiryou1.pdf

避難確保計画の作成徹底と市区町村の助言制度の創設

水害リスクに適切に対応した避難確保計画等の作成の徹底と、訓練によって得られる教訓の避難確保計画等への反映については、市区町村が福祉施設に対して助言・勧告をする支援制度を新たに設けた。

制度に実効性を持たせるには、福祉部局と防災部局、水防・砂防部局が連携し、適切に役割分担する体制を構築する必要がある。またこの体制は施設だけでなく、在宅の避難行動要支援者の避難確保計画作成時にも求められる。

国の支援策は、国土交通省・厚生労働省が連携して市区町村向けの研修を充実、手引等を改定する。厚生労働省は窓口の設置、防災リーダーの育成に取り組む。