信頼できるNPOなどの団体を国が事前に登録して自治体に紹介することで支援活動を円滑化(イメージ:写真AC)

災害関係法の大型改正

2025年2月14日の閣議で、政府は防災体制の強化を図るため、災害対策基本法、災害救助法など6法案の改正を決定した。法案の概要は内閣府防災のHPで見ることができる。前回の「被災者に対する福祉的支援等の充実」に続いて、今回は「被災者援護協力団体」の登録制度の創設について考えたい。

輪島市社会福祉協議会へ支援物資を搬入する筆者。2024年1月24日(一般社団法人福祉防災コミュニティ協会提供)

私自身、これまで多くの被災自治体を訪れ「はじめまして。このたびの災害に際して心からお見舞いを申し上げます。私は福祉防災コミュニティ協会の代表をしている鍵屋一と申します。元は板橋区の職員ですので、いろいろとお役に立てると思います」と伝えるが、ほとんどの場合「一体何者??」という反応が返ってくる。実際の支援活動に入る前に、信頼関係を築くのに時間がかかる。

一方、自治体から見ると、それこそ聞いたこともない支援団体が、数十、数百と押し寄せるという。見分けるのが大変で、さらに活動場所を紹介するなどの調整まではとても無理という声もあった。

そこで、あらかじめ「信頼できるNPO、ボランティア団体」を国が登録して、自治体に紹介するシステムが必要という声があった。これを具体化したのが、今回の「被災者援護協力団体」の登録制度である。

余談だが、被災者援護という用語、何か古めかしくはないだろうか。法律の用語「援護」に合わせたのだろうが、通常使われる被災者「支援」がわかりやすかったと思う。

被災者援護協力団体とはどのような組織か

災害対策基本法改正案の抜粋は以下のとおり。抜粋でも長くなるが、ご寛容いただきたい。筆者が重要な部分に下線を付し、コメントした。 

(被災者援護協力団体の登録)
第三十三条の二 国及び地方公共団体が行う被災者の援護への協力であって、次の各号のいずれかに該当する業務(以下「被災者援護協力業務」という。)を行う法人その他これに準ずるものとして内閣府令で定める団体(以下この条において「被災者援護協力団体」という。)は、内閣総理大臣の登録を受けることができる。

一 避難所(中略)の運営

二 炊き出しその他による食品の給与又は飲料水の供給

三 被服、寝具その他生活必需品の給与又は貸与

四 被災した住宅の応急修理又は災害により生じた土砂その他の障害物の除去

五 被災者からの相談への対応又は被災者に対する情報の提供若しくは助言

六 ボランティアの受入れの実施に係る連絡調整

七 前各号に掲げるもののほか、被災者の援護を図るために必要な協力の業務

●筆者コメント

代表的な支援活動を例示(イメージ:写真AC)

この例示は、多様な被災者支援活動のうち、代表的なものを取り上げている。一から三は避難所系、四は技術系、五が相談支援、六が中間支援、と言われる。もちろん、他にも、足湯、引っ越し、仮設住宅の環境改善、夏の草刈り、冬の雪下ろしなど、多様な支援活動がある。

2 前項の登録(以下「登録」という。)を受けようとする被災者援護協力団体は、内閣府令で定めるところにより、内閣総理大臣に申請をしなければならない。

3 次の各号のいずれかに該当する被災者援護協力団体は、登録を受けることができない。
(中略。反社会的活動団体などが例示されている)

4 内閣総理大臣は、第二項の申請をした被災者援護協力団体が次に掲げる要件の全てに適合しているときは、登録をしなければならない。

一 その行おうとする被災者援護協力業務に必要な機材その他の物資を有し、かつ、当該被災者援護協力業務に従事する者のうち二人以上が当該被災者援護協力業務に関する専門的な知識及び技能を有する者として内閣府令で定める者であるものであること。

二 被災者援護協力業務を適切に行うための次に掲げる措置がとられていること。
イ 被災者援護協力業務を適切に行うための管理者が置かれていること。
ロ 被災者援護協力業務の適切な実施の確保に関する業務方法書その他の文書が作成されていること。
三 その行おうとする被災者援護協力業務の実績が相当程度あること。

●筆者コメント
一は2人以上の専門性を持つ支援者の存在、二は管理者と文書能力、三は実績を求めている。これを機に新たな団体をつくろうとしても、簡単ではないかもしれない。

5 登録は、登録被災者援護協力団体登録簿に次に掲げる事項を記載し、又は記録してするものとする。(後略)

(登録被災者援護協力団体の都道府県知事等による救助への協力)
第三十三条の三 登録被災者援護協力団体は、災害救助法(昭和二十二年法律第百十八号)第八条第二項の規定により都道府県知事等(同法第三条に規定する都道府県知事等をいう。)から協力命令が発せられたときは、同法による救助に関する業務に協力しなければならない。

●筆者コメント
この協力義務は、単なる努力義務ではない。指定公共機関並みの強さではないだろうか。